「日常」をAIで描く——EXILE THE SECOND新曲「SAME OLD」MV、生成AI×昭和アニメの対比が面白い
EXILE THE SECONDが6月17日にリリースした新曲「SAME OLD」のミュージックビデオに、生成AIが活用されている。現実パートに昭和レトロなアニメーション、夢の世界にAI映像——その使い分けがただのトレンド便乗ではなく、楽曲のコンセプトと噛み合っている点が興味深い。
LDHが擁する6人組グループ・EXILE THE SECONDが、1年半ぶりの新曲「SAME OLD」のミュージックビデオをYouTubeで公開した。そのMVに生成AIが使われている。
音楽ナタリーが2026年6月19日付で報じた。
何が起きたか
「SAME OLD」は6月17日にリリースされた楽曲。タイトルは「いつも通り、変わらない日常」を意味する。MVはアニメーションと実写を組み合わせた構成で、生成AIを活用して制作された。
映像のコンセプトは「現実と夢を行き来するストーリー」だ。
- 現実パート:昭和を感じさせるレトロなアニメーション表現を採用。日常のユーモアや親しみやすさを演出する。
- 夢の世界パート:実写映像に生成AIを組み合わせ、「AIならではの非現実的かつスケール感のある映像」に仕上げている。
楽曲のメッセージは「変わらない毎日でも、仲間と一緒なら楽しみながら前に進んでいける」というもの。EXILE THE SECONDはこのMV公開に合わせ、6月20日よりアリーナツアー「EXILE THE SECOND LIVE TOUR 2026 "PERFECT YEAR BEST ~Born To Be Wild~"」をスタートさせる。
なぜこれが重要か
重要なのは「LDHがやった」という事実だ。
EXILE THE SECONDはエンターテインメント大企業LDHのグループアーティストであり、今回のアリーナツアーが示すように、日本の大規模な音楽市場の中心にいる存在だ。AI音楽ツールがSunoやUdioのユーザーコミュニティを超え、こうしたメインストリームのプロダクションに静かに浸透し始めていることを、このMVは示している。
さらに注目したいのは、生成AIの「使い方」だ。
全編AIに丸投げしたわけではない。現実の場面には人間の手によるアニメーション、夢の場面にはAI生成の映像——という役割分担が、楽曲の「SAME OLD(日常)」というコンセプトと対応している。「変わらない日常=昭和アニメ」「逃げ込みたい夢=AIの非現実」という対比は、ツールの使い方として面白い。
論点・異なる見方
AIを使ったMVに対しては、制作現場への影響を懸念する声が必ず出る。映像クリエイター・アニメーターの仕事がAIに置き換えられるのではないか、という問いは正当だ。
ただ今回のケースでは、昭和アニメパートは人間のアニメーターが担っていると考えられる(ナタリーの記事では制作スタジオの詳細は明かされていない)。AI映像はあくまで「夢の世界」という特定の文脈に限定して使われている。全面AIではなく、意図をもって使い分けているという点は、評価できる側面だ。
一方で、これが広がると「夢のシーンはとりあえずAIで」というコスト削減の定式が生まれる可能性もある。今回はコンセプトと一致しているが、次は?という問いは残る。
今後どう展開しそうか
LDH規模のプロダクションがAI映像を取り入れたという事実は、業界内でひとつの参照点になりうる。「大手がやった」というのは、追随を生む。
日本の音楽MV制作において、生成AIが「特別な選択」から「選択肢のひとつ」へと移行する転換点は、すでに訪れているかもしれない。これがポジティブな創造性の拡張につながるか、制作コスト削減の隠れ蓑になるかは、今後の事例の積み重ねを見ていく必要がある。
作り手・聴き手への示唆
「SAME OLD」のMVが提示しているのは、AIを「全部やらせる」のではなく「ここでだけ使う」というアプローチだ。昭和アニメとAI映像という二項対立は、楽曲のテーマと響き合っている。
ツールとしての生成AIを使いこなすとはどういうことか——それは技術の習得だけではなく、どの場面で何を使うかを判断する「編集眼」でもある。そういう意味で、このMVは作り手にとって一つの参考になるかもしれない。
ソース
- 音楽ナタリー「EXILE THE SECOND新曲ミュージックビデオは生成AIを活用」: https://natalie.mu/music/news/677036