Warner Music Group(WMG)のCEO・Robert Kynclが8月5日の決算説明会で、AIプラットフォームとのライセンス契約が2027年度(2026年10月1日開始)からサブスクリプション・ストリーミング収益の「マテリアルな成長」に貢献すると明言した。SunoのWMGライセンスモデルへの移行スケジュールに変化はないとも述べ、7月31日のGEMA勝訴判決を「わが社の戦略を裁判所が確認してくれた」と歓迎した。

何が起きたか

2026年8月5日(水)、WMGは2026年暦上の第2四半期(4〜6月)決算を発表。ストリーミング収益は定数為替ベースで前年同期比11%増、総収益は約18.6億ドルに達した。純利益は約2億400万ドルで、前年同期の1,600万ドルの損失から大幅に改善した。

この好業績の発表とともに、Kynclはより踏み込んだ言葉を使った。SunoとStability AI、KLAY、Udiolの計4社とのライセンス契約が「2027年度から収益成長へのマテリアルな貢献」をもたらすと表明したのだ。

WMGは2025年11月にSunoと業界初のライセンス契約を締結した最初のメジャーレーベルで、その際にコンサート発見プラットフォーム「Songkick」をSunoに売却している。Sunoとの契約ではSunoが「2026年内にライセンスモデルへの移行を完了し、現行モデルを廃止する」ことが条件となっている。

Kyncl曰く、その移行スケジュールは「まったく変わっていない」。

なぜこれが重要か

「マテリアルな貢献(materially contribute)」という言葉は、大企業のCEOが決算説明会でアナリストに向けて使う文脈では軽くない。WMGの同期のストリーミング収益に対して、具体的な数値でインパクトが生じることを投資家に対して約束する発言だ。

これまでAI企業とのライセンス交渉は「権利を守るための防御的措置」として語られることが多かった。Kyncl発言はその位置づけを変える。AIライセンスは「収益の柱のひとつ」として期待されているのだ。

7月31日のミュンヘン地裁判決(GEMAがSunoに対して著作権侵害で勝訴)についてKyncl は「WMGの契約と戦略を実質的に確認してくれた」と評価し、「裁判所に感謝している」と半ば笑いを交えながらコメントした。ライセンス契約なきAI学習はリスクであるという司法の判断が、交渉の前提条件を固めるという見立てだ。

論点・異なる見方

Kyncl はAI音楽と音楽業界の関係を、1950年代のハリウッドとテレビの関係に喩えた。当時、映画スタジオはテレビを「まるごと代替するもの」として恐れたが、ウォルト・ディズニーがABCとの制作契約でディズニーランドの資金を確保し、その後テレビはエンターテインメント業界最大の収益源のひとつになった、という話だ。

この比喩は説得力があるが、反論も成り立つ。テレビは映画とは「別の視聴体験」として棲み分けができた。AIで生成された音楽は、ライセンスモデルが整っても「既存アーティストの楽曲と競合するプレイリスト内の別コンテンツ」として現れる。収益の共有であって、収益の創出とは言えないという批判だ。

WMGはすでに、「完全にAI生成されたコンテンツ」を特定してプロラタ(ストリーミング分配)の対象から除外する条項を拡大していると述べた。Deezerで1日9万トラックのAI音楽がアップロードされている(全体の50%以上)という数字を引きながら、現状の再生シェアは「1〜3%」で、収益化は「その一部」だと明かした。これはAI音楽が量としては多くても、マネタイズはまだ周縁という現実を示している。

なおUniversal Music GroupとSony Musicは現在もSunoと訴訟中。SonyはUdioとも和解しておらず、メジャー3社でWMGだけが二社と契約を結んでいる状況だ。

今後どう展開しそうか

Sunoが2026年内に「ライセンス済みモデル」を正式リリースできるかどうかが最大の焦点だ。移行が完了すれば、WMGはSunoのプラットフォームで生成された音楽から収益を受け取る仕組みが動き出す。その実際の金額がどのレベルになるかは、現時点では未公開だ。

WMGの他に、どのレーベルがSunoおよびUdioと追加で契約するかも注目点。訴訟を続けるUMGとSonyが同様の交渉テーブルに着くタイミングが、業界全体のAIライセンス正常化を測る指標になる。

EU AI法によるオーディオラベリング義務が8月2日から施行されたばかり(EU域内での話)。規制環境の整備が後追いで続く中で、レーベルとAI企業の取引慣行が事実上の業界標準として固まりつつある。

作り手・聴き手への示唆

WMGのKyncl発言は、AIライセンスモデルの到来が「もし来たら」から「来る前提でどう動くか」へと移行したことを示す。

AI音楽を作っている人間にとっては、プラットフォームが「ライセンス済みモデル」へ移行した後、その権利処理がどうなるかへの関心が高まるだろう。ライセンスコスト(間接的に)が明確になることは、AI音楽が「グレーゾーン」から「取引可能なアセット」になることでもある。

聴く側にとってすぐ変わることは何もないが、AIで作った曲がレーベルの収益に貢献する仕組みが整うほど、プラットフォームのコンテンツとしての整備も進む。それが聴き手にどう見えるかは、まだわからない。


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