サンレモ音楽祭、「AIで人間の創造性を代替する楽曲」を締め出しへ——イタリア業界の統一ラインが固まりつつある
イタリアを代表する音楽祭サンレモが2027年から、AIが人間の創造的貢献を「代替・改変・歪曲」する楽曲を受け付けないルールを導入。AI全面禁止ではなく、国内チャート基準との整合を図った線引きだ。
イタリアの国民的音楽コンテスト「サンレモ音楽祭」が、AI使用に関する新ルールを発表した。2027年の出場作品に向けた規定で、核心となる一文はこうだ——「Le canzoni dovranno essere espressione della creatività umana(楽曲は人間の創造性の表現でなければならない)」。
何が起きたか
サンレモを主催するイタリア国営放送RAIが公開した2027年大会の規定によると、AIの使用が禁止されるのは「人間の創造的貢献を代替・改変・歪曲する場合」に限られる。ツールとしてのAI活用は認める、という立場だ。
この方針はイタリア音楽業界団体FIMIが今年初めに策定した公式チャートポリシーと軌を一にしている。FIMIはSony Music、ユニバーサル ミュージック グループ、ワーナー ミュージック グループの連合によって打ち出した基準で、「人間主導の創造性と、純粋に合成された楽曲との間に明確な境界を引く」ことを目的としていた。
FIMIのCEO、エンツォ・マッツァは「私たちの要請を受け入れてもらえた。歴史的な節目だ」とコメントし、「私たちはジェネラティブAIを悪者扱いしているわけではない。責任を持って使われ、クリエイターの権利を尊重するかぎり有益なツールになりうる。しかし人間の創造性に取って代わってはならない」と述べた。
なぜこれが重要か
サンレモはユーロビジョン・ソング・コンテストのイタリア代表選考を兼ねることも多く、欧州の音楽シーンへの影響力が大きい。ここに設けられたAIルールは単なる国内の出来事にとどまらない。
より注目すべきはそのアーキテクチャだ。業界団体(FIMI)が先にチャートポリシーを整備し、それと整合するかたちでフェスティバルにルール導入を働きかける——この順序は、バラバラだったAI音楽の扱いが「業界標準」として収斂していく過程を示している。ARIAチャート(オーストラリア)、Snepチャート(フランス)、韓国のMelonと、今年だけで複数の国・地域が独自の線引きを設けてきた。イタリアはそこにフェスティバル側の対応を加えた。
論点
ただし「AIで人間の創造性を代替しない」という基準は、判定が難しい。どこからがツール活用で、どこからが代替なのか。メロディーをAIに提案させて人間が選んだ場合は?歌詞の推敲にAIを使った場合は?サンレモが具体的な審査プロセスをどう設計するかは、まだ明らかになっていない。
FIMIのポリシーでも同様の曖昧さは残っており、「明確な境界」とうたいながらも実際の判定は個別事案に委ねられる部分が大きい。形式的な禁止より運用の精度が問われる局面が、この先ずっと続くだろう。
今後どう展開しそうか
FIMI主導の枠組みが音楽祭にも波及したことで、イタリア国内では今後、他の音楽賞やコンテストにも類似の基準が採用される可能性がある。欧州全体では、EU AI法の施行とも絡みながら各国が試行錯誤を続けている段階だ。
作り手にとってより現実的な問いは、「AIを使ったかどうか」ではなく「どう使ったかを説明できるか」になっていく。申告・透明性の仕組みをどう設計するかが、フェスティバルや配給プラットフォームにとっての次の課題になりそうだ。
Source: Music Ally – Italy's Sanremo Music Festival bars AI if it replaces human creativity / FIMI公式発表