ユーロビジョン2027の国内選考が、AI音楽の問題を正面から突きつけられている。

ノルウェーの国営放送NRKが運営するメロディ・グランプリ2027には約1500曲が応募された。NRKはすでに純粋なAI生成楽曲を禁止しており、今回の応募の中から30〜50曲をAI生成と判断し除外した(escbeat.com)。

一方、スウェーデンのSVTが主催するメロディフェスティバーレン2027には過去最多となる4077曲が届いた。プロジェクトマネージャーのアンデシュ・ウィストバッカはAftonbladetに「かなり多くのAI楽曲が来ていると確信している」と語っている(Aftonbladet)。ただSVTは禁止には踏み切っておらず、AI検出の技術的ツールも持っていない。現状は「大量の異なるジャンルの曲を無名の一人が投稿している」などのパターン認識に頼るのみだ。

ルールの非対称

NRKとSVTの対応は対照的だ。禁止したノルウェーでも30〜50曲が潜り込んでいた。禁止のないスウェーデンでは「理論的には30曲の選考枠に完全AI生成の楽曲が残る可能性もある」とウィストバッカ自身が認めている。ただし「ステージで歌うのはコンピューターではない」とも強調しており、ライブ歌唱が必須のルールがひとつの防線になっている。

ユーロビジョン本体を運営するEBU(欧州放送連合)は「楽曲は人間が作るべき」としながらも、国別の選考ルールは各放送局に委ねている。イタリアのサンレモ音楽祭はAIによる作曲補助を全面禁止しており、対応は国によってバラバラだ。

SVTがはっきりさせているのは「自分たちが先行してルールを作りたくない」という立場だ。ウィストバッカは「これは音楽業界が解決すべき問題。業界が決めたことに従う」と語っている。

投稿数の膨張という問題

SVTには別の懸念もある。AI楽曲の増加に伴い、来年以降は投稿数が1万曲を超える可能性があるという。SVTは投稿されたすべての楽曲を試聴しているが、規模が増えれば予算と人員が追いつかなくなる。「来年に備えて予算を確保できるか検討しなければならない」とウィストバッカは語っている。

フィルタリングのコストを誰が負担するかは、今後の選考制度設計に影響する実務的な問いだ。

スウェーデンのAI音楽前史

スウェーデンは以前からAI音楽をめぐる事案が多い国でもある。架空のアーティスト「Jacub」がSpotifyのスウェーデンチャートで首位を獲得した事件(2026年1月)や、The Velvet Sundownが100万再生を記録した後にAI生成と発覚した事件(2025年夏)などが続いた。こうした経緯からIFPIスウェーデンはAI主体の楽曲を公式チャートから除外するルールを設けている。

それでもメロディフェスティバーレンには禁止規定がなく、今年の応募数は前年より増えた。

問いとして残ること

選考プロセスがAI楽曲の侵入を防げるかどうかは、現時点では不透明だ。ノルウェーは禁止しても一定数が届いた。スウェーデンは禁止なしで最終選考を進めようとしている。

Eurovision本体がAIに関する統一ルールを持たない以上、各国の判断がばらつく状態は当面続く。2027年2月のメロディフェスティバーレン開幕まで、この問いに答えは出ない。