音楽会社として初めて、ソニー・ミュージック・グループがAI政策連合「ARIAM(Alliance for Responsible Innovation in the Arts & Media)」に加盟した。2026年9月23日、ARIAMのエグゼクティブ・ディレクター兼CEOのヴィクトリア・ファーニスが発表した。

何が起きたか

ARIAMは2026年6月15日にロサンゼルスで設立された。映画・テレビ・ジャーナリズム・出版・教育・テクノロジーにまたがる「業界横断型」のAI政策連合で、ファーニスはNetflixやWarner Bros.出身のエグゼクティブだ。

これまでの加盟メンバーには、The Walt Disney Company、Fox Entertainment、ITV、BBC、Adobe、Condé Nast、Financial Times、The New York Times、ケンブリッジ大学出版局などが名を連ねていた。音楽会社の参加はソニーが初となる。

ソニー・ミュージック・エンタテインメントのCOO、ケビン・ケラハーはこう述べている。

「生成AIはアーティストや作曲家に大きな機会と課題をもたらしている。だからこそARIAMに参加し、クリエイティブ産業全体の未来を形づくる議論に加わることを嬉しく思う。責任ある・倫理的な方法で、人間のアーティストとしての価値を中心に置いて開発された場合にのみ、AIはイノベーション・クリエイター・消費者がともに繁栄できる環境をつくる可能性を持つ」

ARIAMは「著作権だけでなく」、子どもを含む消費者とクリエイターの双方を守る「責任ある設計」の法的・政策的枠組みの構築を掲げている。

なぜこれが重要か

ソニー・ミュージック・エンタテインメントは現在、主要レーベルの中で唯一、SunoともUdioとも正規ライセンス契約を結んでいない唯一の大手だ。2026年7月20日にはUdioに対する2度目の訴訟(3万117件の録音物)をニューヨーク連邦裁判所に提起。ARIAMの発表のわずか5日前の9月18日には、ユニバーサル・ミュージック・グループとともにSunoにも2度目の訴訟(6万202件の録音物)を起こしている。

訴訟を継続しながら政策対話の場に加わる——この動きは矛盾に見えるかもしれない。しかし別の読み方もできる。訴訟は「過去の不正利用」への法的対応であり、ARIAMへの参加は「これからの産業ルール」を誰が書くかという話だ。ソニーはその両方を同時にやっている。

論点・異なる見方

ARIAMはその姿勢として「AIを遅らせることが目的ではない」と明言している。ファーニスはかつて「目標は、より広いエコシステムを長期的に持続可能にすること」と語った。この立場は、生成AIの全面否定ではなく「責任ある共存」を求める方向性だ。

一方で、音楽業界の草の根アーティストや独立系レーベルからすれば、「大手がルールをつくるテーブル」への懐疑もある。ARIAMの現メンバーはDisney、FT、NYTといった大組織ばかりであり、インディペンデントな声がどう反映されるかは不透明だ。

また、UMGやWMGといった他のメジャーレーベルがARIAMに参加しない——あるいはまだ参加を表明していない——理由も注目に値する。業界内での戦略の違いが透けて見える。

今後どう展開しそうか

ARIAMは2026年中に評議会会合、リーダー円卓会議、年次サミットを予定している。ソニーの参加により、音楽の著作権や学習データ問題が議題に上りやすくなると見られる。

ただし、この種の業界連合が実際の政策変更や法制度につながるまでには時間がかかる。ARIAM自体が設立からまだ3ヶ月ほどであり、現時点では「誰が参加しているか」という象徴的な段階だ。

作り手・聴き手への示唆

AI音楽をつくっている人にとって、こうした動きは「ルールが決まる前の時間」が終わりに近づいていることを示すかもしれない。業界の大手が政策連合を通じて「責任あるAI」の定義を握ろうとしている今、その定義がどう形づくられるかは、個人クリエイターの活動空間にも影響する。

どんなルールになるかを静観するか、それとも独立した立場から声を上げるか——その問いは、AI音楽シーンにかかわるすべての人に向けられている。


ソース: Music Business Worldwide