Sunoは今、二つの相反する立場を同時に取っている。

法廷では「フェアユース」を主張する。著作権で保護された楽曲を使ってAIを学習させることは、変革的な利用として合法だ——という論理だ。一方でプラットフォームの中では、ユーザーが自分で作った音楽さえも「既存の著作物に一致する」として自動的にブロックしている。


何が起きているか

r/SunoAIのコミュニティでは5月中旬以降、同じ問題が相次いで報告されている。ユーザーが自分で録音した音声や、Sunoで生成した楽曲をアップロードしようとすると、「Uploaded audio matches existing work of art(アップロードされた音声が既存の著作物に一致します)」というエラーが表示されてブロックされる。

誤検知であることは明らかなケースも多い——自分だけが持っているはずのオリジナル音源でさえ、同じエラーが出るという報告が続いた。問題は深刻で、コミュニティ内に「5分ごとに同じ投稿をしないでください」という注意書きが添えられたメガスレッドが立てられるほどだった。

Sunoはこの問題をDiscordで認め、次のように述べた。

「自分の音楽の権利管理は解決に取り組んでいる課題だが、まだ実現できていない」

「ロックがかかっていない場合、誤判定のフラグが立てられている可能性が高い」

修正のETAは「なし」。問題は現在も続いている。


なぜこれが重要か

ここに構造的な矛盾がある。

Sunoは現在、ユニバーサル ミュージック グループ(UMG)とソニー ミュージックに訴えられており、著作権で保護された音源をAIの学習に使ったことを事実上認めながら、フェアユースの法理によって適法だと主張している。フェアユースの判断は本来、機械的なパターン照合では決めることができない——それが使われた文脈、目的、創造的な変換の程度など、複合的な要素を考慮しなければならない。

ところがSuno自身が実装した著作権検知システムは、まさにその「機械的なパターン照合」で動いている。一致するパターンがあればブロック——文脈も意図も関係ない。

法廷で「自動検知では創造的利用の判断はできない」と主張している会社が、自社プラットフォームでは自動検知に創造的利用の判断を委ねている。


論点・異なる見方

Sunoの立場:法的圧力への対応

Sunoにとって、この検知システムの実装は法的防衛として合理的な選択だったと見ることもできる。UMGとソニーとの訴訟が続く中で、著作権侵害への対策を取っているという姿勢を示す必要がある。「何もしていない」よりも「対策している」ほうが、少なくとも法廷戦略上は有利に映る。

作り手の立場:ツールへの信頼が揺らぐ

しかしユーザーにとっては、これは別の問題だ。自分で作った音を自分のアカウントで使えない——これはプラットフォームを「使う権利」に対する根本的な裏切りに近い。Sunoは月額課金のサービスだ。対価を払っているのに、自分の音楽が自分のツールで弾かれる。

「フェアユース」を旗印にしてきたSunoが、今度は自分のユーザーにとってのフェアユースを認めていないという皮肉は無視できない。

より広い視野:AIプラットフォームが直面する構造問題

この問題はSunoに限らない。著作権訴訟のプレッシャーが高まるほど、AIプラットフォームは保守的な検知システムを実装する動機が強まる。検知が保守的になるほど、誤検知が増える。誤検知が増えるほど、正当な創作活動がブロックされる。

これは一種のジレンマだ。ライセンス交渉が妥結していないプラットフォームでは、このトレードオフはますます厳しくなるだろう。


今後どう展開しそうか

SunoはWMGとのライセンス契約を結んでいるが、UMGとソニーとの訴訟は依然係争中だ。法的リスクが続く限り、著作権検知システムが緩和される可能性は低い。むしろ、今後さらに多くのコンテンツがフラグを立てられるようになるかもしれない。

UMGとソニーは先月、Sunoのトレーニングデータ内に61,000曲以上の自社音源を音声指紋技術で特定し、訴訟対象の大幅拡大を申請した。こうした技術がますます精度を上げていく中で、プラットフォームが実装する検知システムも精度と範囲を広げていく可能性がある。

一方でSunoは、WMGとの共同製品を「今後数ヶ月以内」に公開すると発表している。ライセンスが整った楽曲を扱う環境では、検知システムの設計も変わりうる。ライセンス契約が増えれば、「合法か否か」の判断がより明確になり、誤検知が減るかもしれない。


作り手・聴き手への示唆

「AI音楽ツールを使えば自由に作れる」という期待は、今も変わっていない。しかし実際には、そのツールには法的圧力に応じた検知システムが組み込まれており、その精度には限界がある。

自分の音楽を使って制作する場合——たとえば自分の声や楽器音をSunoに取り込む場合——は、誤検知に遭遇するリスクがある。「自分のものだから問題ない」は、自動化されたシステムには通じない。

ツールが変わったとしても、自分の音楽の「出所を証明する手段」を持っておくことの重要性は、AI時代に入ってむしろ増している。


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