AIで音楽を作る次の壁は「見せること」だった——Neural Frames、4万人超のミュージシャンが使うMV生成AIがARR $5mを突破
ベルリン発のAIミュージックビデオ生成プラットフォーム「Neural Frames」が年間収益率(ARR)500万ドルを突破した。4万人超のミュージシャンが使い、すでに200万本以上のMVが生成された。音楽を作るコストがAIで下がった今、次の課題として浮かび上がる「届ける手段としてのビジュアル」——その需要が数字に表れている。
音楽を作ることは、今や多くの人の手の届く場所にある。ではそれを「見せること」は?
何が起きたか
ベルリン拠点のAIミュージックビデオ生成スタートアップ Neural Frames が、年間収益率(ARR)500万ドル(約7.5億円)を突破した。Music Ally が2026年6月2日に報じた。
プラットフォームはすでに 4万人を超えるミュージシャン に使われており、生成されたミュージックビデオの本数は 200万本超。無料トライアルあり、サブスクリプションは月額$26・$66・$199の3段階で提供されている。
マイルストーンと同時に、著名な人物の参加も発表された。AI音楽テクノロジー企業Musiioの創業者であり、現在は投資家として活動するHazel Savageが、Neural Framesの戦略アドバイザーに就任した。
創業者はDr. Nicolai Klemke。昨年9月のアムステルダム・ダンス・イベント(ADE)での出会いをきっかけに、SavageがKlemkeに注目するようになったという。
「その時点ですでに信じられないほどの収益を上げていた。次に話した時には、2ヶ月で収益が倍になっていた」
そう語るSavageは続ける。
「ロケットシップが目の前で飛び立つのを見ている、そんな感覚の時がある。当然、乗りたかった」
なぜこれが重要か
SunoやUdioが「誰でも音楽を作れる」入口を広げた今、制作コストは大きく下がった。だが音楽を公開し、ストリーミングプラットフォームやSNSで届けようとする段になると、別の壁がある。ミュージックビデオだ。
YouTubeやTikTok、Instagramで音楽を届ける文脈において、「絵のない音楽」は不利だ。スマートフォンとDAWだけで曲を完成させたアーティストが、次にMV制作のために映像制作会社を探し、費用と時間を投じる——このギャップを埋めようとするのがNeural Framesのポジションだ。
Neural Framesは現在、三つのモードを提供している。
- Autopilot:「2クリックで曲からMVを生成」をうたう自動モード
- Frame-by-Frame Editor:より細かい制御を可能にするコマ単位の編集
- Text-to-Video Editor:Kling、ByteDance の Seedance、Runway、Stable Diffusion など複数のAI動画モデルを切り替えて使えるモード
ARR $5mという数字は、この需要が実在することの証左でもある。
論点・異なる見方
「作る」の次の課題をAIが解決できるか
Neural Frames の成長は、AI音楽ツールの普及に伴う「第二の需要」が生まれていることを示している。音楽制作のコスト低下によって参入者が増えれば、その分「どう届けるか」の競争も激しくなる。ビジュアルはその一つの答えだ。
ただし、AIが生成するMVの「質」と「個性」をめぐる問いは残る。自動生成される映像が増えれば、差別化はより難しくなる。ユーザーレビューを見ると、Neural Framesを「これまでで最も驚くべきコラボレーション体験」と語るアーティストがいる一方、映像の独自性をどこで担保するかは各クリエイターの課題になる。
Hazel Savageの参加が示すもの
Musiioは2019年創業のAI音楽タグ付け・キュレーションスタートアップで、2022年にSoundCloudに買収された。Savageはその後、音楽テック投資家として活動している。Neural Framesへの参加は、業界内の識者が「次に来る」と判断したことの一つの証拠として読むこともできる。
今後どう展開しそうか
Neural Framesはすでに「Kling 3」を含む最新の動画生成モデルに対応しており、ARR成長と並行してモデルの品質向上も取り込んでいる。Savageの参画は、より組織的な事業拡大——おそらく資金調達やパートナーシップ——の準備段階である可能性がある。
AIミュージックビデオのカテゴリ自体は、まだ確立されたリーダーがいない領域だ。SunoやUdioがAI音楽生成で占めたポジションに相当するプレイヤーが、映像側にも現れるとすれば、Neural FramesはそのポジションをARR $5mで争い始めている。
作り手・聴き手への示唆
4万人という数字は、「AIでMVを作る」がごく一部のマニアの話ではなくなっていることを示している。自宅で楽曲を作り、プラットフォームに投稿し、ビジュアルまで含めて完結させる——そのフルセットが個人の手の届く場所に来つつある。
もちろん、ツールの存在が「何を表現したいか」という問いを代わりに答えてくれるわけではない。映像が音楽の意図を的確に体現できるかは、プロンプトを書く人間の感覚と言語化の力に委ねられている。ここでもやはり、AIはツールであり、選択するのは人間だ。
ソース
- Music Ally: "AI music-videos startup Neural Frames hits $5m annual run rate" (2026-06-02): https://musically.com/2026/06/02/ai-music-videos-startup-neural-frames-hits-5m-annual-run-rate/
- Neural Frames 公式サイト: https://www.neuralframes.com/