Apple MusicへのアップロードのうちAI生成楽曲が3分の1を超えたが、実際の再生シェアは0.05%未満。Appleは「AIに依存しすぎた音楽は置けない」と警告を発したが、線引きと執行の仕組みはまだ不明確だ。


① 何が起きたか

4月、Apple Music副社長のオリバー・シュッサーが数字を公開した。現在、Apple Musicへのアップロードの3分の1以上が「100%AI生成」の楽曲だという。しかし同時に、それらがユーザーの実際の再生時間に占める割合は0.05%未満にとどまることも明かした。

さらに5月20日、Appleはラベルやディストリビューターへの通達を強化。「AIの使用に過度に依存した音楽はApple Musicには置けない」という立場を明確にした。ただし、その「過度」の線引きや執行の仕組みは現時点で明示されていない。


② なぜこれが重要か

この数字が示しているのは、AIが「音楽をカタログとして量産する」ことに成功した一方で、リスナーの選択はそこに向かっていないという現実だ。

作ることの敷居が下がった。その結果、プラットフォームに「誰にも聴かれない楽曲」が大量に堆積し始めている。Apple Musicはその問題を、データとして初めて公開した最初の大手プラットフォームになった。


③ 論点・異なる見方

「量が多すぎるだけで、質の問題ではない」という見方 AI楽曲の0.05%という数字は、「AI楽曲が聴かれない」ことを意味しない。そもそもカタログの絶対数が人間の曲と比べて桁違いに多くなれば、比率が下がるのは当然だという指摘もある。

「Appleの警告は恣意的すぎる」という懸念 「AIに頼りすぎた」の定義がないまま排除の方針を示すことで、AI支援で制作している人間のアーティストが不当な影響を受けるリスクがある。現在の開示システム(Transparency Tags)は任意参加かつ自己申告で、執行の仕組みもない。

「これは音楽の問題ではなくスパムの問題だ」という整理 AI楽曲の多くは、ストリーミングの印税目的で大量生成・大量投稿されているケースも含む。Apple Musicが対処しようとしているのは「AI音楽」ではなく「カタログスパム」である、という見方もある。


④ 今後どう展開しそうか

短期的には、Appleが示した「曖昧な排除方針」の具体化が焦点になる。どこまでをAI依存とみなすか、どう検出するか——今後数ヶ月でその輪郭が出てくるはずだ。

中期的には、他のプラットフォームがAppleの動向を見ながら対応を迫られる。SpotifyはUMGとAIカバー・リミックスの枠組みを整備しつつあるが、「ライセンス済みAI」と「無許諾スパム」の間で、各社がどう線を引くかは揃っていない。


⑤ 作り手・聴き手への示唆

AI楽曲を作っている人へ。カタログが多いことと、聴かれることはイコールではない。これはAI固有の問題ではなく、音楽一般の話でもある——ただ、AIはその問題を加速させた。「作れる」と「届く」の間にある距離は、むしろ以前より開いているかもしれない。

リスナーへ。0.05%という数字を「人間はAI音楽を拒んでいる証拠」とみるのは、少し安易かもしれない。その前にアルゴリズムがAI楽曲をフィードから遠ざけている可能性がある——だとすれば、あなたの「選択」はまだ本当の意味でテストされていない。

もう一点。あなたが何を再生して何をスキップするかは、すべてデータとして記録されている。そのデータが次のAI音楽を形成する。将来のAI楽曲は、あなたが「好んだ曲」に近づくよう最適化されたものになっていく。それがいいことかどうかは、まだ誰にも分からない。


Sources: Music Ally / Apple Insider (4月) / Apple Insider (5月20日) / Hypebot