AIで曲を作って、そのままツアーに出る——SunoはそのループをSongkickで閉じようとしている。

何が起きたか

SunoはTicketmaster/Live Nationでグローバルビジネス開発担当VPを務めていたMichael Chuaを、新設ポスト「Vice President and General Manager of Suno Live Experiences」として採用したと発表した。ChuaはコンサートディスカバリーサービスのSongkickを含むSunoのライブ音楽部門全体を統括する。

SunoがSongkickを取得したのは2025年11月、Warner Music Group(WMG)との著作権訴訟和解の一環として、だ。その際の条件としてWMGとのライセンス契約が成立し、Suno v6(2026年9月9日リリース)はWMG・BMG・Believeのライセンス下で動いている。

Chuaのこれまでの仕事は、Ticketmaster上でSpotify・YouTube・Apple Music・TikTok・Snapとのパートナーシップを構築し、チケット購入をTicketmasterのサイトに来なくてもできる仕組みを整えること。つまりディスカバリーとコマースを他プラットフォームに流し込むアーキテクチャを作ってきた人物だ。

なぜこれが重要か

Sunoはここ数ヶ月でAI音楽生成ツールという枠を超えた動きを続けている。

  • 8月:Suno Vinyl(AIで作った曲を12インチレコードにプレス)の待機リスト開設
  • 9月:マーチャンダイズストアの準備が判明(Fourthwall利用)
  • 6月:独立アーティスト向けインキュベータープログラム「Spark」を開始

今回のSongkick統合はその延長線にある。Paul Sinclair(Chief Music Officer、前Atlantic Records GM/EVP)は「ライブ音楽は我々が構築しようとしている『最初のクリエイティブエンターテインメントプラットフォーム』の中核だ」と述べた。

制作 → リリース → グッズ → ライブの動線をひとつのプラットフォームで完結させる——そのビジョンが輪郭を持ちはじめている。

論点・異なる見方

この構想には、いくつかの前提をクリアする必要がある。

Sunoで曲を作るユーザーの大半は、実際にライブをやるアーティストではない。今のところSunoのユーザーは「一曲作ってみた」層が主流で、ツアーを組めるような活動アーティストとは異なる。Songkickが持つライブデータやファン層と、Sunoのクリエイター層がどれだけ重なるかは未知数だ。

一方、SunoのSparkプログラムはまさにその橋渡しを狙っている。無名アーティストへの資金提供と既存アーティストとの制作キャンプ参加は、「AIで曲を作るだけの人」を「ステージに立てる人」に引き上げようという試みだ。Chuaが採用理由として「アーティストが最初のアイデアからステージまでたどり着く手助けをしたい」と話したのは、この文脈で読む必要がある。

著作権訴訟の状況も引き続き複雑だ。UMGとSony Musicは2026年9月18日に60,202件の音源を巡る第二次訴訟をボストン連邦裁判所に提起している。v6がWMG・BMGとのライセンスで動く一方、UMG・Sonyとの係争は継続中という状態は変わっていない。

今後の展開

Sunoが「制作プラットフォーム × ライブ発見 × マーチャンダイズ」のエコシステムを本当に作るなら、それはSpotifyやApple Musicが提供していない何かに近い。ただそれは同時に、「AI音楽生成」というコアから離れていくことでもある。

次に見るべきポイントは、SunoのSpark参加アーティストがSongkick経由でどれだけ実際のチケット販売に結びつくか、そしてUMGとの訴訟がSunoのプラットフォーム拡張に何らかの制約をもたらすかどうかだ。


Source: Music Business Worldwide