オリコンが10月7日に発表した週間YouTubeチャート(集計期間:2026年9月25日〜10月1日)で、YAJU-MCの「INMU KING」が2位に入った。視聴回数は386万6043回。前週7位から5ランク上昇し、8月の初公開から積み上げてきた勢いがチャートの数字として表れた形だ。

1位はEBiDAN(恵比寿学園男子部)の「Yes! 東京」(594万4093回)。3位以降にはM!LK「時空超えてユニバース」(361万7285回)、ILLIT「It's Me」(340万7035回)、米津玄師「IRIS OUT」(339万8722回)が続く。「INMU KING」はそれらすべての上に立った。

ソース: オリコン週間YouTubeチャート 2026年09月25日~2026年10月01日


何が起きたか

「INMU KING」はネット動画投稿者のやじゅまんが、YAJU-MC名義で制作した楽曲だ。インターネット上のミームを題材にしており、生成AIを使ったMVをYouTubeで公開している。公開は2026年8月10日。総再生回数はすでに1700万回を超えている。

オリコンのYouTubeチャートは、同じ楽曲の公式MV・ユーザー投稿動画・歌詞動画などの合算視聴回数で順位を算出する。SNS上での拡散がそのまま数字に反映されやすい仕組みであり、ネット発のコンテンツにとっては追い風になる構造だ。

初登場20位(9月11日〜17日集計、134万9419回)から7位(9月18日〜24日集計、330万5523回)を経て、今週の2位へ。3週連続の上昇は、一時的なバズではなく持続した拡散があったことを示している。


なぜこれが重要か

「メジャーアーティストの楽曲がチャート上位を占める」という景色が、ひとりの投稿者のAI音楽によって崩れた。

厳密に言えば、YouTubeチャートはテレビや音楽番組の影響を受けやすいメジャー向けのランキングと異なり、ネット上の拡散力が直接反映される。「INMU KING」の躍進はその構造を利用したものでもある。だが、それでもM!LKやILLIT、米津玄師の上に立ったという事実は、数字として残る。

Rezonate Magazine が繰り返し注目してきた「聴き手が作り手になる」流れは、これまで主にAI音楽コミュニティの内側での話だった。今回の出来事は、その動きが既存チャートというフォーマットを通じて、AI音楽に関心のない層の目にも届き始めたことを示唆している。


論点・異なる見方

この話にはいくつかの層がある。

チャートの解釈について:オリコンのYouTubeランキングはあくまで視聴回数の合算であり、楽曲の「支持」や「浸透度」を直接示すものではない。一時的な話題性によるバズと、継続的なファンによる再生は区別されない。2位という数字が、どの程度の実態を反映しているかは慎重に読む必要がある。

倫理的な側面:zakzakの報道によれば、「INMU KING」の題材となったのは、過去に一大ネットミームとなった特定の成人向け作品の出演者だという。また、同曲のヒットに便乗する形で、実在の人物をAIで「踊らせる」二次創作動画が多数拡散している。

SNS上では面白がる声がある一方、「炎上した相手ならおもちゃにしていい、という論理はおかしい」「肖像の無断利用は一貫して問題」という批判も出ている。生成AIによって動画制作のハードルが下がった結果、二次加工コンテンツの拡散速度は従来とは比較にならない。チャートの数字が盛り上がる裏で、こうした問いも同時に広がっている。

これは「AI音楽」という括りの外で語られがちなテーマだが、AI生成コンテンツの社会的な受容を考える上で切り離せない文脈だ。


今後どう展開しそうか

次週のチャートで「INMU KING」が1位を取るかどうかが、ひとつの注目点になる。YouTubeの視聴回数はSNSの話題性に大きく左右されるため、上昇トレンドが続くとは限らない。

一方、今回の騒動がチャート基準の議論を呼ぶ可能性はある。韓国MelonのAI音楽チャート規制(2026年9月)やフランスSNEPの方針(2026年9月)など、チャート運営側がAI生成コンテンツへの対応を検討し始めているのは世界的な流れだ。オリコンが今後何らかの対応を取るかは不明だが、今回の件は無関係ではないかもしれない。


作り手・聴き手への示唆

「INMU KING」のチャート入りは、AI音楽が「特定のコミュニティの趣味」から「誰もが触れるかもしれないもの」へと領域を広げつつあることを示している。

ただし、その拡散の過程には、題材の選び方や二次利用のあり方をめぐる問いが伴っている。チャートの数字はひとつの事実だが、「どうやってその数字を作ったか」という文脈は、AI音楽全体への評価と無縁ではない。

作り手にとっては、注目を集める力と、その使い方の両方が問われている局面だと思う。