ブルースロックの第一線で活躍するギタリスト、Joe Bonamassaが、AI音楽に関する踏み込んだ発言をした。10月初旬、テキサス州オースティンで開催されたEric Clapton's Crossroads Guitar Festivalでのインタビューで、Blues Rock Reviewの取材に応じたもの。

「Eddie Dalton」という謎

きっかけはBillboardのブルースチャートに名前の上がる「Eddie Dalton」という人物だった。Bonamassaは「Eddie Daltonって知ってるか?」と逆に質問し、「ライブを観たことも、会ったこともない」と続けた。「一部の人からすれば、正当なアーティストということになってるらしい」という含みある言い回しは、この人物がAI生成の可能性を指していると受け取れる。

現時点でEddie DaltonがAI生成のアーティストであるかどうかは公式には確認されていない。が、名前も素性も不明なまま主要チャートに登場しているという事実は、ブルースコミュニティ内でも議論を呼んでいる。

ファンの選択権は否定しない

Bonamassaが明確にしたのは、リスナーが何を聴くかは「100%その人の権利」だという点だ。

「車に乗ってゾーンアウトしたいとき、AI音楽が好きなら構わない。Marcus Kingを聴きたいなら、Eric Galesを聴きたいなら、それもその人の自由だ」

ただし、線引きはある。「そういうアーティストが、生きて活動しているミュージシャンと同じカテゴリに入っていいかというと、それはひどい話だ」とも述べた。ファンの選好は尊重しつつ、チャートや評価軸での同列扱いには反対する——そのスタンスは一貫している。

「Sunoで歌詞を書いたとしても、重大犯罪じゃない」

より踏み込んだのは、AI活用への実態認識だ。「みんなが良心に従ってやっている状態だ」とBonamassaは言い、制作の中でAIを使ったとして非難されるアーティストたちのことを指摘した。

「SunoでLyricを書いたとしても、それは重大な罪でも軽犯罪でもない」

自身は使っていないと断りながらも、業界全体でAIの活用がすでに広がっていることを認める。「岩の下に住んでいないかぎり、今の音楽の中にAIを感じ取るか?絶対そう。200枚のブルースレコードを聴いて、何度か感じたか?絶対そう」

これは単なる容認ではなく、「もうそこにある」という現状認識だ。

新人にとっての誘惑

Bonamassaが理解を示すのは、特に若手・無名のアーティストが置かれた状況についてだ。

「このプログラムを使えばもう少し注目される、ライブにもう数人来てくれる——そう思えばやってしまう。そういうことが起きているのを無視するのは大間違いだ(We'd be very remiss to just bury our head in the sand)」

ストリーミングとSNSが支配する現在、目立つこと自体がハードルになっている。その文脈でAIツールへの誘惑を語ったこの発言は、スター側からの珍しい共感的な視点といえる。

音楽の核心は、ステージにある

ただしBonamassaの根本的なスタンスは変わっていない。彼の言葉には「録音で説得できることと、ステージで聴衆を納得させることは別だ」という哲学が貫かれている。

AI音楽の識別が困難になりつつある今だからこそ、ライブパフォーマンスという「証明の場」への信頼が際立つ。


「AI vs. 人間」の二項対立に乗らず、実態を認めながら線引きを探す——Bonamassaの発言は、この問いを正直に生きようとするアーティストの一つの答えだった。

Source: Blues Rock Review / Guitar Player