「GG fuckin' easy」——この7秒のクリップが、ここ数週間でXに72億回以上視聴されている。ゲーム用語「GG EZ(Game, Easy)」を題材にした短いポップ・ラップ。その曲が、AIで生成されたものだったと知っている人はどれほどいるだろうか。

何が起きたか

曲は今年5月、匿名の日本人音楽プロデューサー「M.Sasuke」名義でリリースされた。ボーカルも含めてAI生成で、インスタグラムのバイオには「I write music with AI.」とある。BTS・ジョングク、TXT・ヨンジュン、Stray Kidsのリノ、ITZYのイェジなど多数のK-popアイドルがダンス動画を投稿し、Spotifyでの再生数は1,800万回を超えた。

その後8月末、カナダのマルチリンガル・インフルエンサーKaien NuenとカバーアーティストのAngelina "Sugar" Zhangが、M.Sasukeの許可を得て人間の声でリメイク。このバージョンに「hey, don't say that!」のやりとりが加わり、7秒のクリップとして爆発的に拡散した。クレジットはM.Sasuke・Kaien・Sugarの連名になっている。

なぜこれが重要か

この話は「AIか人間か」という二項対立では片付かない。

M.Sasukeは歌詞を書き、アレンジの方向性を決めた。音そのものはAIが生成した。KaienとSugarは既存の曲を人間の声で再解釈した。では、誰が「GG EZ」を作ったのか。

Forbesが「AI生成」と表現したこの曲は、現在もM.Sasukeのアーティスト名義でSpotifyに存在している。K-popアイドルが踊ったのはそのバージョンだ。世界に広まったのは人間バージョンだが、それを可能にしたのは元のAI曲があったからでもある。

異なる見方

M.SasukeはAI使用を隠していなかった。謝罪はしたが、自分が「作者」であるという立場は崩していない。「ツールが変わっても、意図と選択があれば作者だ」という主張は、Rezoneが一貫して支持してきた立場でもある。

一方でKaienとSugarの存在は、AIが生み出した素材を人間が「仕上げた」という別の問いを提示する。リメイクは創作なのか、それとも人間的な「お化粧」なのか。どちらの解釈にも根拠がある。

K-popアイドルたちは、もとの曲がAI生成だと知っていたのかどうか。知っていたとして、それが彼らの判断を変えたのかどうかも、今のところはっきりしていない。

今後どう展開しそうか

バイラルヒットの文脈でAI曲への認識が広まることで、「AI生成のラベルが流通経路や消費行動に影響するか」という実験が自然発生的に起きている、と見ることができる。

M.Sasukeが次の曲でどういう選択をするか、そしてラベルの有無がチャートや配信プラットフォームの扱いにどう影響するか——業界全体で整備が進む「AIラベリング」の議論と、このケースは無関係ではない。

作り手・聴き手への示唆

K-popのダンスチャレンジという文脈でAI曲が消費されたことは、「AI音楽を特別視しなくなりつつある受け手」の存在を示唆する。一方で拡散したのは「人間がリメイクしたバージョン」だったという事実は、まだ何かが残っていることも示す。

その「何か」が声なのか、感情なのか、物語なのかは、まだ誰もはっきりとは言えていない。


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