10月1日、ロサンゼルスで開催されたBloombergの「Screentime」カンファレンスに、SunoのCEO Mikey Shulmanが登壇した。そこで飛び出したのは、同社の成長を示す数字と、AI音楽をめぐるルール論争に燃料を投じる発言だった。

何が起きたか

Shulmanは、Bloomberg TechのEd Ludlowとのトークセッションで、今年2月に公表した数字——有料登録者200万人、年間売上3億ドル——について言及した。

「最後に公表した数字は登録者200万人、売上3億ドルだった。今はそれを遥かに上回っている」

具体的な新しい数字は示さなかったが、成長の継続を改めて示したかたちだ。累計ユーザー(無料含む)は1億人超という数字も、2月時点からの推計として触れられた。

参考として、Sunoの売上推移はこうなる。2025年11月時点では年間売上2億ドル(WSJ報道、Series C調達時)→ 2026年2月に3億ドルを公表 → 今回「それを超えた」と示唆。6月にはBond Capital主導でシリーズD(4億ドル超、評価額54億ドル)を完了している。

なぜこれが重要か

Sunoをめぐる状況は、今年に入って複雑さを増している。

8月にBMGとライセンス契約を締結、9月にはBelieve(TuneCore親会社)とも合意。そして9月9日にはWMG・BMG・Belieceとの協力のもとで開発した「v6」モデルを正式リリースし、旧モデルを全廃した。

一方でUMGとSonyは一切のライセンスを拒否しており、9月18日には二度目の訴訟を起こした。v6モデルについて「同じ毒のある木からとれた実だ」と主張している。

ライセンス組と非ライセンス組という構図は、9月のSunoをめぐる記事でも触れたが、売上が伸び続けているという事実は、その緊張関係をより鮮明にする。

「ルールがないのは良いこと」発言の文脈

今回、最も反響を呼びそうなのはラベリング問題に関する発言だ。

AIで作られた音楽を明示すべきかという問いに対し、Shulmanはこう答えた。

「AI音楽とは何か、それは本当に幅広いスペクトルを指す。テキストボックスに数語入力した人から、最終工程でほんの一部だけ使うプロまで様々だ。誰か一者がルールを決めるのではなく、みんなで決めたい。しかも技術自体が変化しているので、今の段階で明確なルールがないのは、実は良いことだと思う」

これは率直に言えば、規制の先送りを歓迎する立場だ。ユーザーへの情報開示を求める動きが各国で進む中(EUのAI法施行、ARIAチャートの方針変更など)、主要プラットフォームのCEOがこの立場を取ることは、業界団体や権利者団体からの反発を招く可能性がある。

とはいえ、「技術と使われ方が変わる中でラベリングの定義も変わる」という指摘は、それ自体は正確だ。「AIを使った」の一言で括れないほど、制作の文脈は多様になっている。

論点

Shulmanの言う「一緒に決める」は誰との話か。 WMGやBMGとの協働という文脈で語られているが、UMGやSonyはそのテーブルにいない。ルール形成のプロセスから主要プレイヤーが外れたまま進むなら、それは「みんなで決める」とは言い難い。

売上の成長が法的リスクを上回っている、という判断。 複数の訴訟を抱えながらも売上が伸び続けているという事実は、「訴訟があっても事業は止まらない」という前例をAI音楽業界全体に示す。これが他の事業者の行動を後押しするかどうかは、今後の判決次第だ。

今後の展開

Sunoが「300Mを超えた」とした新数字は、次の公式発表か資金調達ラウンドのタイミングで明らかになると思われる。IPO観測も続いており(7月に報じた通り)、売上数字の開示はその布石としての意味も持ちうる。

ラベリングルール問題については、EUのAI法執行(2026年8月〜)、各国チャートのAI開示基準化、業界団体の動きが重なり、年内に何らかの動きがある公算が高い。

作り手・聴き手への示唆

Sunoが「ユーザーが好きなアーティストの音楽と一緒に何かを作れる」と説明するとき、それはある種のファンクリエイション文化の延長線上にある話だ。ただし、その「好きなアーティスト」の録音を訓練に使ったかどうかという問いは、まだ法廷で争われている。

使う側は、自分が楽しんでいるツールが何を前提として成立しているかを、薄く知っておく価値がある。熱狂を否定するつもりはないが、その熱狂の外側にある問いに目を向けることも、リスナーとしての誠実さだと思う。


ソース: Music Business Worldwide(2026年10月2日)