AIが生み出した偽の音楽で数百万ドルを詐取したとして有罪を認めた男の判決が、来週に迫っている。ストリーミング不正の歴史において、初の重大な連邦刑事判決となる可能性がある。

何が起きたか

ノースカロライナ州在住のMichael Smith(54歳)は今年3月、ワイヤー詐欺共謀の1件について有罪答弁した。判決期日は10月6日、マンハッタン連邦裁判所。

Smithが行ったとされることは単純かつ大規模だった。AIを使って架空のアーティスト名義で数千曲を生成し、ボットアカウントの群れを使ってそれらを何十億回と再生させた。Spotify、Apple Music、Amazon Music、YouTube Musicといった主要プラットフォームが標的となり、本来なら正当なアーティストに分配されるはずのロイヤルティが流れ込んだ。

連邦検察官Nicholas W. ChiuchiologとKevin B. Meadがこのほど裁判所に提出した文書によれば、Smithの不正取得額は800万ドル超(約81億円相当)。不正は6年以上にわたって継続されたという。規模の大きさを示す事例として検察は、2023年4月のデータを引用している。YouTube Musicのファミリープラン加入者によるテイラー・スウィフト全カタログのストリーム数が930万回だったのに対し、Smithの架空カタログは8090万回を記録していた。

量刑をめぐる攻防

求刑には三者が異なる数字を示している。

  • 連邦検察: 少なくとも46ヶ月の実刑。「公の目が注がれているこの事件で軽い判決を下せば、ストリーミング詐欺には実質的な罰がないというメッセージになる」
  • 弁護側: 実刑なし、保護観察のみ。Smithは「深く反省しており」、当初は合法だと信じていたと主張
  • 連邦保護観察官: 24ヶ月の実刑を推奨

弁護側の主張は、Smithが不正行為の当初は「法的なグレーゾーン」にいたというものだ。音楽出版業界に詳しい弁護士にも相談していたという。これに対し検察は「彼自身の言動が、最初から詐欺だと認識していたことを示している」と反論している。

有罪答弁の条件として、Smithは8,091,843.64ドルの返金にも合意している。

なぜこれが重要か

AI音楽ツールの普及とともに、ストリーミング詐欺は産業規模の課題になった。Deezerは自社プラットフォームのAI生成楽曲比率が50%に迫ることを公表し、DistroKidやTuneCore経由のAIスパムはレーベルや他のアーティストが得るロイヤルティを希薄化させ続けている。

Smith事件が注目されるのは、刑事訴追という点だ。これまでの対応は主に民事——プラットフォームによるアカウント停止、ディストリビューターによる削除依頼、レーベルによる損害賠償請求——にとどまっていた。今回の量刑次第では、AI音楽詐欺に対する刑事的抑止力が機能し始めるかどうかの試金石となる。

「社会的サービスプログラムを詐取すれば、誰であれ重大な処罰を受けることになると明確なメッセージを送る必要がある」と検察は訴えている。

論点

弁護側の「当初は合法だと信じていた」という主張は、AI音楽ツールの法的グレーゾーンを考えれば無視しにくい側面もある。実際、AI生成楽曲をプラットフォームに流通させること自体は当時も今も違法ではない。問題は「ボットによる不正再生」であり、「AI生成であること」ではない。

ただし検察は、Smithが詐欺の意図を早期から持っていたことを示す証拠があると言う。「AI音楽だから詐欺」ではなく「不正再生で金を盗んだから詐欺」——この区別は今後の議論でも繰り返し問われることになる。

一方で、正当なAI音楽制作者から見れば、この事件の判決が一律に「AI音楽=詐欺」的な印象を与えることへの懸念もある。Smithのやったことはスケールの大きなストリーミング詐欺であって、AI音楽制作それ自体ではない。

今後の展開

10月6日の判決が注目点。46ヶ月が下されれば、米国で「AI音楽詐欺に連邦実刑」という前例が生まれる。保護観察にとどまれば、「重大な犯罪でも実刑を免れる」というシグナルになりかねないと検察は警告する。

ストリーミング詐欺対策に取り組むLANDR、Deezer、プラットフォーム各社が判決をどう受け止め、ポリシーに反映させるかも注目点のひとつだ。


Source: Rolling Stone