ウィリー・ネルソン、ブラッド・ペイズリーたちがAIデータセンターに反旗を翻すわけ
カントリーミュージックのアーティストたちが相次いでAIデータセンターへの反対を表明している。保守・リベラルを超えた珍しい連帯は何を示しているのか。
AIが音楽を作る時代に、音楽家たちはAIを動かすインフラそのものに声を上げ始めた。
ここ数週間、カントリーミュージック界の大物アーティストたちが次々とAIデータセンターへの反対を公言している。ブラッド・ペイズリー、タニア・タッカー、ウィリー・ネルソン、そしてギャヴィン・アドコック。政治的立場も世代もバラバラな彼らを結びつけているのは、巨大インフラが地域の土地・水・静寂を奪うという怒りだ。
何が起きているか
ペイズリーは地元ナッシュビルの動物園からわずか500ヤードのところに計画されたデータセンターに反対のInstagramポストを投稿、ジャック・ホワイトやシェリル・クロウらが賛同した。タッカーはテキサス州知事グレッグ・アボットに宛てて「ルーラル・テキサスを救え」と公開書簡を送り、データセンター計画の一時停止を求めた。テキサス州だけで約248件のデータセンターが計画中だという(Texas Tribune調べ)。
ネルソン自身は、出身地テキサス州アボットでの建設計画について「騒音・水の略奪・光害――こんなものをどの街の近くにも必要としていない」と書いた。「農村アメリカの強さは、広大な自然・地元のビジネス・大地とのつながりから来ている」とも。
保守系アーティストのアドコックも「農家と動物と土地が傷つけられている。田舎に住んでいることへの罰だ」と激しい言葉でデータセンターを非難した。
なぜこれが音楽シーンの問題なのか
カントリースターたちの訴えは直接にはAI音楽批判ではない。しかし背景にあるのは、ChatGPT・SunoといったAIサービスを動かすデータセンターが急増し、その建設地が農村・地方都市に集中しているという現実だ。
AI音楽生成サービスの利用が増えるほど、電力と水を大量消費するインフラが必要になる。音楽家たちの足元で、その負荷を引き受けているのは都市ではなく、田舎に生きる人々なのかもしれない。
異例の連帯が示すもの
興味深いのは、この反対運動が党派を超えていることだ。Gallupの調査(2026年5月)では、データセンター建設に「強く賛成」と答えた人はわずか7%。「自分の住む地域への愛着」という共通項が、リベラルと保守を同じ側に立たせている。
UCLA・ラスキン・イノベーションセンターのメーガン・マリン氏はRolling Stoneに「これほど分断された時代に、データセンターへの反対は今のアメリカを束ねるものになっている」と語っている。
今後どう展開しそうか
トランプ政権はAIインフラ整備を強く推進しており、データセンター建設への支持を崩していない。一方で2026年中間選挙を前に、この反対ムードが地方票に影響するとの見方も出ている。
音楽家の発言力が、AI産業のインフラ整備に対する市民的なブレーキになり得るか——まだわからない。ただ、ウィリー・ネルソンがAI批判の文脈で声を上げる時代になったことは、何かのシフトを告げているように思える。
Source: Country Music Is Coming Out Strong Against Data Centers – Rolling Stone