Sunoが9月9日にリリースしたv6は、1年以上にわたる法廷闘争の末に到達した「和解の産物」だった。Warner Music、BMG、Believeとのライセンス契約を結び、初めて許諾済みデータで学習したモデルとして登場した。

その9日後、MusicRadarがSunoのRedditコミュニティの反応を集めた記事を公開した。見出しは「"I'm cancelling my subscription": Suno users slam its V6 update as 'muffled, generic, soulless garbage'」(「解約する」:Sunoユーザー、v6を「こもった、無個性な、魂のないゴミ」と酷評)。

何が起きたか

ユーザーの不満は主に二点に集中している。

ひとつは音質だ。「こもって、くすんで、妙に生気がない」「ボーカルが埋もれていて、高音がほとんど消えている。スピーカーに毛布をかぶせたような感覚」と表現するユーザーがいた。

もうひとつは均一さだ。プロンプトを変えても似たような結果が返ってくる、という声が多い。「過剰にプロデュースされ、激しくコンプレッサーをかけられたトラックは、メロディー、荒さ、魂の欠片もない」という発言もMusicRadarに引用された。

「v5.5でアルバムを2枚リリースした。2日間の無料試用期間を使って同じスタイルやプロンプトをv6で試したが、比較するとこもった、無個性な、魂のないゴミしか生成されなかった」

これは単なる不平ではない。解約を報告するスレッドがコミュニティ内で急増していると報じられている。

なぜこれが重要か

ユーザーがv6の劣化を説明する際に持ち出す仮説がある。ライセンスデータの範囲が狭すぎた、というものだ。

Sunoはこれまで「ネット上で入手できる合理的な品質のあらゆる音楽ファイル」を学習データと説明してきた。それが訴訟の引き金になった。v6はWarner、BMG、Believeのカタログとユーザーデータで学習された。許諾済みであることは確かだが、「インターネット上の全音楽」と比べれば明らかに規模が小さい。

ユーザーたちはここに算数をあてはめる。小さくて均質なデータセットで学習したモデルは、出力も均質になる、と。

Sunoはこれを公式に否定も肯定もしていない。v6は「より速く、より表現豊かで、より高品質」だと説明しているが、多くの課金ユーザーはそれに同意していない。

論点・異なる見方

この話が単純でないのは、音楽業界出身のエンジニアが異なる評価を下しているからだ。

グラミー賞の投票権を持つエンジニア・プロデューサーのSamori Colesは、v5.5とv6を同一の曲・プロンプトで徹底比較した上でこう述べた。「サウンド的にはv6の方が優れていた。ウォームで、ワイドで、低音がより力強く、ミックスに奥行きがある。良いシステムで並べて聴けば、v6の方が完成度の高いレコードだ。その点は差がない」

ただし彼はパフォーマンス面ではv5.5に軍配を上げた。ボーカルのグルーヴが失われ、「急いたような」印象があるというのだ。

彼の指摘で重要なのはこの部分だ。「ボーカルに滲みが聞こえると言っているコメント欄の人たちは間違っていない。私も聞こえる。でもそれはエンジニアとして聴いているから気づく。音楽を作ったことのないリスナーがv6を聴けば良い音だと感じるだろう。ほとんどの人が使っている目的において、それが基準になる」

専門家と一般ユーザーで「品質」の基準が異なる——これは重要な視点だ。

後戻りできない構造的な理由

批判を受けて以前のモデルに戻してほしいというリクエストがコミュニティで噴出しているが、Sunoはこれに応えられない。v6のリリース時に、すべての旧モデル(v5.5を含む)を完全に廃止したからだ。

廃止に踏み切った理由は技術的なものだけではないとみられる。v5.5はスクレイピングデータで学習されたモデルであり、UMGとSonyによる訴訟で現在も争点となっている。旧モデルをモデル選択画面に復活させることは、相手方に有利な証拠を提供することに等しい。

法的なリスクと、ユーザーが望む機能が直接衝突している。

今後どう展開しそうか

Sunoがこのユーザー反発をどう処理するかは不明確だ。モデルのパッチ更新でクオリティ改善を図るのか、v6のライセンスデータ範囲を拡大するのか、あるいはコミュニティの批判は一部の声に過ぎないとして無視するのか。

ただし、ライセンスデータの制約が本当にモデルの均質化につながっているとすれば、これはSuno固有の問題ではない。ElevenLabsやその他の「合法化」路線を歩むAI音楽サービスも同様のトレードオフに直面する可能性がある。

「業界の承認」と「創造的多様性」のどちらを優先するか——これはAI音楽の今後を規定する問いになりえる。

作り手・聴き手への示唆

AI音楽ツールを実制作に使っている人にとって、今回の件には実務的な教訓がある。モデルのバージョン管理はツール側の裁量にゆだねられており、使っているバージョンが突然消えることはある。

Sunoに限らず、気に入ったバージョンで生成したものはローカルに保存しておく習慣を持つべきだろう。ツールが使い捨てである以上、作品はその時その時の出力として手元に残しておく他ない。

もう少し大きな話としては、「ライセンス済み=高品質」という等式は成立しないという点を今回が明確に示した。規制・法律への適合と創造的な価値は別の軸にある。


参照:MusicRadar, September 17, 2026