音楽プロモーションプラットフォームのSubmitHubが、AI生成楽曲を全面的にブロックするポリシーを発表した。創業者のJason Grishkoff氏が公式サイトの声明で明らかにした。

何が起きたか

新ポリシーの核心は、SubmitHub独自のAI検出技術によって「AIである可能性が85%以上」と判定された楽曲の投稿を受け付けないというものだ。Grishkoff氏によれば、この検出AIのサードパーティによる精度評価は99.4%とされている。

「純粋なAI投稿をブロックする、というのが新しいポリシーです」とGrishkoff氏は述べた。

SubmitHubは今年8月、投稿楽曲の23.2%が完全なAI生成であるという調査結果を発表していた。今回の禁止措置はその調査の延長線上にある判断だ。

「10%の収益を捨てた」という自覚

注目すべきは、Grishkoff氏がこの決定を「ビジネスロジックに反する」と認めている点だ。

「実際にここで収益源の10%を断ち切っています。なので、この決断は従来のビジネス論理に逆行します」

その上で、こう続けた。「結局のところ、私たちは本物の音楽を宣伝するのに実際に役立つプラットフォームを作りたいと考えた。アルゴリズムの関係でAIクリエイターが目標を達成できないなら、それができると主張するサービスを売るのは誠実ではない」

SpotifyやApple MusicなどのDSPが事実上静観を続けるなか(Spotifyの共同CEOは今年2月、「Spotifyが許可するツールを決めるべきではない」と述べている)、プロモーション側のプラットフォームが先に線を引いた形だ。DeezerとTidalはすでにAI検出によるアルゴリズム推薦除外を実施しており、Bandcampは完全禁止に踏み切っている。

「ビジネスロジックに反する」ことをやる理由

SubmitHubの判断で興味深いのは、価値判断より実用的な理由を前面に出している点だ。「AI判定されたトラックはSpotifyのアルゴリズムにも引っかかる可能性が高い。だとしたら、成果を出せないサービスを販売するのは誤りだ」というロジックである。

AI音楽の是非ではなく、「自分たちのサービスが機能するかどうか」という観点からの判断は、賛否どちらの立場にとっても一定の説得力がある。

ただし、誤検知の可能性をGrishkoff氏自身が認めている点は留意が必要だ。「間違えることもあるかもしれない」としており、AIを活用しつつも人間の表現を組み込んだハイブリッドな楽曲がどう扱われるかは、まだ不明確な部分が残る。

作り手への示唆

AI音楽を制作している人にとって、SubmitHubのブロックは直接的な影響を持つ。ただし、この動きが示しているのはプロモーションの手段が狭まりつつあるという現実だ。一方でSubmitHubが「AI音楽は音楽ではない」という価値判断を下したわけではなく、あくまでプラットフォームとしての機能性の問題として整理している。

音楽配信・プロモーションのエコシステムがAI生成コンテンツとどう向き合うかは、今後も各プレイヤーによって異なる答えが出続けるだろう。


Source: Music Ally, SubmitHub