AI音楽プラットフォームのSunoが、Cherry Miaoを同社初のCFO(最高財務責任者)として迎えたと発表した。MiaoはLinkedInの投稿で自ら就任を明らかにした。

何が起きたか

Miaoは以前、データ・AIマーケティング企業のHightouch(2026年4月のシリーズDで$150M調達、評価額$2.75B)でCFOを務めており、財務・法務・データ・収益オペレーションを統括していた。SunoとはHightouchの顧客かつエンジェル投資家として関係を持ち、そこからの入社となった。

Miaoの就任コメントは印象的だ。「私がSunoに参画するのは、同社が史上最速で成長している企業の一つだからではありません(そうだとしても)。娘が言葉を話す前に歌い始めたからです」。

「消費を強いるインターネットの中で、1億人以上がSunoを使って何かを作った。創造と表現を中心に置いた世界——それが娘に生きてほしい世界です」とも述べた。

なぜこれが重要か

Sunoは今年に入ってから幹部採用のペースを上げている。2月には元Merlin CEOのJeremy Sirolaを最高商務責任者(CCO)として、それ以前の2025年7月にはWMGで20年以上のキャリアを持つPaul Sinclairを最高音楽責任者(CMO)として迎えた。CFO就任はその流れの延長線上にあるが、意味合いは少し異なる。

CFOは外部向けの顔だ。投資家への説明責任、監査対応、将来的な資本市場へのアクセス——その全てに関わる役職にこれだけ実績のある人材を充てることは、Sunoが「次のステージ」を真剣に見据えていることを示唆する。

Sunoの現在地を確認しておくと、2026年6月に$400M超のシリーズDを$5.4BのPost-money評価額で完了。2月時点で有料会員200万人、ARR $300Mを報告している。従業員数は6月時点で約200名、年内70%増の採用計画も明らかにしていた。9月9日にはv6モデルをWMG・BMG・Believeとのパートナーシップのもとで公開したばかりだ。

論点・異なる見方

ただし、この幹部採用を単純にポジティブなシグナルとして読みすぎるのは危険かもしれない。

Sunoはいまも複数の著作権訴訟に直面している。UMGとSony Musicが原告となるRIAA主導の訴訟は9月30日に証拠開示が締め切られる。GEMAはミュンヘン地裁で7月31日に一審勝訴している。CanadaのSOCANが9月2日に提訴したのも記憶に新しい。

財務基盤の強化を急ぐ背景に、これらの訴訟リスクを織り込んだ準備があるとすれば、CFO採用は「成長企業の次のステップ」と同時に「法的・財務的リスク管理の強化」でもある。両方が同時に正しいことは十分あり得る。

今後どう展開しそうか

証拠開示の締め切りが9月30日に迫る中、年内の動向が大きく業界の構図を変える可能性がある。SunoはWMGと和解し、BMG・Believeとライセンス契約を結んだが、UMGとSonyは依然として交渉テーブルについていない。

CFOの入社は、こうした交渉を財務的に裏付ける体制の整備と読むこともできる。IPOは可能性の一つだが、まずは主要レーベルとの全面的なライセンス合意の成否が、Sunoの次の成長フェーズを左右する分水嶺になりそうだ。

作り手・聴き手への示唆

1億人以上が「消費ではなく創造」のためにSunoを使ったというMiaoの言葉は、Sunoが自社をどう語ろうとしているかを如実に示している。

ただ、そのナラティブを支える法的・財務的基盤はまだ構築途上にある。使い続ける理由がある人はそれでいい。ただ、このプラットフォームが次の1年でどう変わるか——あるいは変わらざるを得なくなるか——を注視する価値はある。


Source: Music Business Worldwide