ElevenLabs、Music v2.5をリリース——UMGとの提携とは「別物」と明言
ElevenLabsが9月11日、AI音楽モデルの最新版「Music v2.5」を公開した。R&Bやロックなどボーカルとアコースティックサウンドへの対応が大幅に改善。同時に、先日発表したUMGとの提携プラットフォームはこのモデルとは別に開発される、と自ら線引きした。
ElevenLabsが9月11日、楽曲生成サービス「ElevenMusic」の中核モデル「Music v2.5」を公開した。リリースと同時に、先週発表したUniversal Music Group(UMG)との戦略的提携に関する重要な補足も明示した——「今回の提携はMusic v2.5とは別のものだ」と。
何が起きたか
Music v2.5はElevenMusicのデフォルトモデルとなった(旧モデルのv2も引き続き選択可能)。公式ブログによると、同じプロンプトでv2とv2.5を聴き比べる盲検テストを47,885ペアで実施し、v2.5が多数決で好まれたという。
改善が顕著なのはボーカルとアコースティック楽器が前面に出るジャンル——R&B、ソウル、ヒップホップ、ロック、メタル、オーケストラ、映画音楽が挙げられている。ElevenMusic、開発者向けのElevenLabs API、メディア・マーケター向けの「ElevenCreative」でそれぞれ利用できる。
権利面でも整理された。Freeプランでは1日5曲まで可逆圧縮なしのロスレスダウンロードが可能で、ElevenMusicへのクレジット表記を条件に商用利用も認められる。Proプランでは月400曲のロスレスダウンロードが可能。「今後プランを変更・解約しても、作成済みのトラックに適用されていた条件は変わらない」という説明も加えられた。
ただし例外がある。「他のアーティストの楽曲を参照して作ったトラックはダウンロードできない」とされており、そこに対象外のラインが引かれている。
そして今回の発表のもうひとつの要点。ブログ末尾にこう記されている——「ElevenLabsはUMGとの複数年にわたる戦略的提携を発表しましたが、この提携はMusic v2.5とは別です」。
なぜこれが重要か
わざわざ「別物」と書いた理由を考えると、構造が見えてくる。
ElevenMusicはもともと2025年8月にKobalt・Merlinとのライセンス契約とともに立ち上がったサービスで、インディペンデント系の音源・楽曲を使いやすい環境を整えてきた。一方、UMGとの提携は「リミックス・マッシュアップ・パーソナライズされたボーカル体験」を提供する別プラットフォームを共同開発するもので、現在まだ開発中だ。
つまりElevenLabsは、今ある製品(ElevenMusic)とこれから作る製品(UMGプラットフォーム)を意図的に切り離している。ユーザーには「今使えるもの」と「メジャー権利に乗っかれるもの(いつかできる)」がそれぞれ別物として提供される形だ。
この構造は、AI音楽プラットフォームが「ライセンスの中身で差別化する時代」に入りつつあることを示している。音質の比較だけでなく、「何の権利のもとで何が作れるか」が選択軸になっていく。
論点・異なる見方
「47,885ペアのテストでv2.5が好まれた」という数字は自社テストであり、独立した評価ではない。盲検形式と大きなサンプルサイズは信頼性を一定担保するが、どういうプロンプトで行われたか、テスターの属性はどうかなどの詳細は公開されていない。
他のアーティストの楽曲を「参照した」トラックのダウンロードを禁じるルールは、逆に言えば参照なしのプロンプト生成なら商用利用を含めた幅広い用途が開かれていることを意味する。ここをどう評価するかは立場による。既存ミュージシャンへの影響を懸念する視点からは、「参照しなければ何でも作れる」モデルは問題を解消していないとも言える。
また、ElevenMusicはKobalt・Merlinとのライセンス契約を持っているが、今回のアップデートでその文脈への言及はなかった。v2.5の学習データについての説明も省かれている点は、業界が引き続き注視する部分だ。
今後どう展開しそうか
ElevenLabsの当面の関心は、UMGとの共同プラットフォームの具体化と、Music v2.5を軸にしたElevenMusicのユーザー拡大の両方にある。Music v2.5が「声を中心としたジャンル」に特に強いというポジションは、ElevenLabsが元々持つ音声合成の強みと方向性として自然だ。
Suno v6がWarner・BMG・Believeと組んだ数日後にUMG-ElevenLabs提携が発表されるなど、AI音楽企業とレーベルの連携は急速に動いている。Music v2.5のリリースはモデルの更新というより、「ElevenMusicを独自の軸で強化し続ける」という姿勢の表明として読むのが適切かもしれない。
作り手・聴き手への示唆
ElevenMusicを使っている、あるいはこれから使おうとしている人にとっては、選択肢が増えた。ロスレスダウンロードがFreeプランでも可能になったことは、試作のハードルを下げる。ジャンルとしてR&Bやヒップホップのボーカル楽曲を作っている人は、v2.5への乗り換えを試す価値はあるだろう。
「UMGとの提携プラットフォーム」は引き続き開発中であり、どのアーティストが参加し、何が実際にできるようになるかはまだわからない。今あるものと、来るかもしれないものを混同しないことが重要だ。
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