音楽生成AIが急増する中で、もう一つの問いが浮かび上がっている。「大量に生まれる楽曲を、どうやって正しい聴き手に届けるのか」だ。

何が起きたか

MusiMapが9月10日、4つの製品スイートの提供を開始した。

  • MusiTag — 音楽カタログを感情・ムードなどで自動タグ付け
  • MusiSearch — タグ情報を活用したコンテキスト検索
  • MusiProfile — 楽曲の特性に基づくオーディエンス分析
  • MusiTrace — オーディオフィンガープリントとロイヤリティ管理

新CCOには元GracenoteおよびUniversal Music GroupのTy Robertsが就任。初の顧客として音楽・ブランドエージェンシーのLight Onとの契約も発表した。

MusiMapはもとは2008年にベルギーの音楽学者グループが創業した企業で、その研究は1986年まで遡る。2021年にスイスの音楽テック企業Utopia Musicに買収されたが、Utopiaが経営破綻した後も単独で生き残り、今回の再スタートに至った。

なぜこれが重要か

Rezが注目するのは、製品の中身そのものよりも、この会社が突いているポイントだ。

ストリーミングには「コールドスタート問題」がある。新曲がリリースされた初日、プラットフォームはその曲についてほぼ何も知らない。リスナーの再生履歴も、アルゴリズムの学習データも、まだない。だから「誰に届けるべきか」が判断できない。

これまではアーティストの過去の楽曲傾向から類推するしかなかった。しかし音楽生成AIの台頭で、「過去の楽曲がない新人」が急増している。Sunoで作った曲をDistroKidで配信する──そのケースでは、アーティスト履歴という手がかりがそもそも存在しない。

楽曲そのものの音響的・感情的特性を分析するMusiMapのアプローチは、この空白を埋める可能性がある。

「人手」という差別化

MusiMapが強調するのは、100万曲を超えるカタログを「音楽学者が手作業で分析した」という点だ。CTOのFrédéric Notetはこう語っている。

「AIで新しいスタートアップをすぐ立ち上げることはできる。でも彼らには、ほぼ40年かけて積み上げた基礎データがない」

競合にはMusiioやCyaniteなどがいるが、MusiioはSoundCloudに2022年買収、Figaroは昨年Tuned Globalに買収されている。独立したプレーヤーとして残るMusiMapの戦略は、スケールより質——大手が手薄な中小レーベルやライツホルダーに絞って展開することだ。

開かれる問い

MusiMapが語る「質 vs. 量」の対比は、AI音楽全体に跳ね返ってくる問いでもある。

生成AIが楽曲の量を爆発させる一方で、「どの楽曲が誰にとって意味があるか」を判断する能力は追いついていない。人手による分析が本当にスケールの壁を越えられるかは未知数だが、そのアプローチが問題意識として正確であることは確かだ。

同社は自動車業界とストリーミングサービスへの展開も視野に入れており、Gracenoteでの経験を持つRobertsの役割がどう活きるかが次の注目点になる。


Source: MusiMap unveils its revamped suite of 'music intelligence' tools — Music Ally