Believeが4ヶ月でSunoへの態度を180度転換——TuneCoreとの配信も解禁、ライセンス契約を締結
今年4月にSunoを「違法プラットフォーム」として配信ブロックしたBelieveが一転、Sunoとのグローバルライセンス契約を発表。TuneCoreアーティストも対象で、WMG・BMGに続く業界再編の一幕となった。
今年4月、Sunoを「海賊スタジオ」と呼んで配信を自動ブロックしていたBelieveが、わずか4ヶ月でその判断を撤回した。9月8日(現地時間)、BelieveとTuneCoreはSunoとのグローバルライセンス契約を発表。業界のライセンス化の流れが、また一歩進んだ。
何が起きたか
Believe(パリ本拠の独立系音楽ディストリビューション大手)とその傘下のTuneCoreは9月8日、Sunoとのストラテジック・パートナーシップを発表した。
契約の対象は、Believe・TuneCoreの「参加レパートリー(participating repertoire)」。具体的には、アーティストや所属レーベルがオプトイン(参加を選択)した楽曲のみがSunoの新しい学習モデルに提供される形となる。
「Believeとの合意のもと、BelieveおよびTuneCoreのアーティスト・レーベルの音楽が、Sunoが音楽業界と連携して立ち上げる新しい音楽モデルに含まれることになります」と両社は述べた。
さらに、Sunoの「インダストリー・パートナー・モデル」で制作されたトラックは、Believe・TuneCoreを通じての配信対象となる。
Believe CEOのDenis Ladegaillerieは声明で、「アーティストとレーベルが、自分の権利を守りながらAI技術が生み出す価値に参加できる意味のある選択肢を与えることができる」と述べた。
なぜこれが重要か
今回の契約のポイントは、立場が逆転したことにある。
BelieveはついこないだまでSunoを「違法(unlicensed)」と断定していた側だ。2026年4月30日、同社はSunoやElevenLabs、Udiosを「ライセンスなきプラットフォーム(unlicensed platforms)」と分類し、それらで生成されたトラックの配信を自動ブロックすると発表した。当時の言い方では「海賊スタジオ(pirate studios)」と表現されていたとも報じられている。
それが4ヶ月後には同じ相手と契約している。
この変化は、Sunoがこの間に着実に積み上げた交渉実績によるところが大きい。WMGとは昨年11月に訴訟和解と同時にパートナーシップ締結、BMGとは今年8月に「グローバル・アライアンス」を締結済み。Believe/TuneCoreはそこに続く形だ。
独立系アーティストへの影響という観点でも、この契約の意義は大きい。TuneCoreはセルフリリースの中小規模アーティストが多く使うプラットフォームだ。メジャーレーベルとの契約が「業界としての承認」を示すとすれば、TuneCoreを含むBelieveとの契約は「インディペンデント・エコシステムへの浸透」を意味する。
論点・異なる見方
もちろん、この契約が業界全体の賛同を意味するわけではない。
オプトイン方式は、アーティストが「参加するかどうかを選べる」という設計だ。表向きは権利者保護の文脈で語られるが、「参加しなければ配信上の機会を失う可能性がある」という圧力になりうるという見方もある。実際、Sunoのインダストリー・パートナー・モデルで作ったトラックだけがBelieve/TuneCoreで配信できる、という仕組みは、選択を見せかけにした囲い込みと読むことも可能だ。
また、Sunoは現在もUMGやSony Musicとの訴訟が継続中だ(SunoはYouTubeからの音源取得を法廷で認めたばかりで、こちらについても後日改めて取り上げる)。ライセンス契約を次々と積み上げても、訴訟の帰趨によっては今後の状況が大きく変わる可能性がある。
今後どう展開しそうか
Sunoは次世代モデルの立ち上げに向けて「学習保護ツール」「ダウンロード上限」「透明性ツール」などを整備中で、これらをセットにして業界各社との交渉材料にしている。Believe/TuneCoreとの契約は、その方針が一定の説得力を持ち始めていることを示している。
ただし、現行モデルで生成されたトラックは今回の契約対象外で、新モデルのリリース後に旧モデルが退役するまでは「グレーゾーン」が残る。Sunoが掲げる「ライセンスされた音楽業界」への移行には、まだ時間がかかるだろう。
作り手・聴き手への示唆
TuneCoreを使っている独立系アーティストにとっては、オプトインの判断が今後求められる局面が近づいている。「自分の音楽をSunoの学習データとして提供するかどうか」を選ぶ選択肢が生まれたということでもある。
参加すれば新モデルで作られたトラックを配信できるというメリットがある。一方で、自分の音楽がAI学習に使われることへの違和感も、当然ありうる。この問いに正解はない——ただ、これまでは選択肢すらなかった。それが変わりつつある。