Udioが答弁書を提出——Sonyへの賠償額「1作品$200」を主張、最大$4.5B超との乖離が鮮明に
Udioが8月27日、Sonyの第2訴訟に対する答弁書をニューヨーク地裁に提出。学習利用は「quintessential fair use」と主張する一方、もし侵害が認定された場合の損害賠償は「1作品あたり最低$200」で足りると訴えた。SonyはAI企業として唯一ライセンス合意に至っていない。
何が起きたか
Udioは2026年8月27日、Sony Musicが7月20日にニューヨーク南部地区連邦地裁に起こした第2訴訟に対する答弁書を提出した。Music Business Worldwideが入手した書面によると、Udioは学習時の複製行為を「quintessential fair use(公正使用の典型例)」と位置づけたうえで、仮に侵害が認定されたとしても法定損害賠償額は「1作品あたり最低$200」に抑えられるべきだと主張している。
Sonyは今年7月の訴訟提起時に30,117件の録音物についての侵害を主張し、1件あたり最大$150,000(法定上限)の損害賠償を求めている。単純計算でSonyの求める上限は45億ドルを超える。Udioが主張する最低額では同じ作品数でも約600万ドルになる。
答弁書はYouTubeからの学習データ取得についても言及しており、Udioは「YT-DLPを使用してYouTubeから音声データを取得した」と改めて認めた。ただし、Sonyが音楽認識企業Audible Magicを使って特定した30,117件の楽曲が実際に学習データに含まれていたかどうかについては「真偽を判断するのに十分な情報がない」として否認している。
訴訟の経緯
元の訴訟は2024年に提起され、333作品を対象としていた。SonyはこれにUDIOが学習に使ったとされる残りの30,000件超を追加しようとしたが、裁判官のAlvin K. Hellerstein氏は2026年6月に申請を却下。「残りのクレームは別訴として提起できる」として、Sonyは7月に第2訴訟を起こした。
なお、UMGは2025年10月、WMGは同年11月にそれぞれUdioとの訴訟を和解・ライセンス締結で解決している。Sonyは3大メジャーの中で唯一、ライセンス合意に至っていない。
なぜこれが重要か
この答弁書が示すのは、Udioが長期戦を覚悟しているという姿勢だ。すでに2社のメジャーと和解・ライセンスを済ませた状況でSonyとの交渉が続いているのは、双方の条件に大きな溝があることを示唆している。
$200と$150,000という賠償額の幅——750倍の開き——は単なる数字のゲームではない。この差が最終的にどこに落ち着くかは、AI音楽サービスの「フェアユース」論がどこまで法廷で通用するかに直接かかっている。GEMA対Sunoでドイツの裁判所がSunoに対して否定的な判断を下した直後、米国の訴訟の行方にはより大きな注目が集まっている。
論点と見方
Udio側の論理: 学習プロセスは非公開の技術的処理であり、最終的なアウトプットは新しい創作物だから「変容的利用」にあたる。これはOpenAIやAnthropicが生成AIの著作権問題で繰り返してきた主張と構造的に同じだ。
Sony側の論理: 30,000件超の録音物が無断で学習データに使われた、という事実認定が先にある。フェアユース判断の4要素のうち、特に「市場への影響」で争う余地がある。AI音楽サービスの拡大がストリーミング収益に食い込むという主張も織り交ぜてくることが予想される。
業界全体の視点: UMGとWMGはライセンス収入というスキームを確立することで「AIとの共存」路線に舵を切った。Sonyが訴訟で大きな勝利を得た場合、その判決は業界全体のAIライセンス交渉のシナリオを大きく書き換えうる。一方でSonyが敗れれば、ライセンスなき学習が法的にグレーゾーンとして残り続ける可能性がある。
今後の展開
Udioは答弁書で全訴因の棄却とSonyへの訴訟費用負担を求めている。また一部のクレームについては陪審審理の対象外だと主張しており、訴訟の範囲をめぐる前哨戦が続くとみられる。
Sonyが主張するYouTube「ストリームリッピング」クレーム(デジタルミレニアム著作権法の技術的保護手段回避条項に基づく)については、Udioは「Sonyはこの条項で保護される『被害を受けた者』に該当しない」として入口論で争う構えを見せている。
地裁での審理は数年単位のタイムラインになる可能性が高く、その間に業界のAIライセンス実務はさらに動き続ける。
作り手・聴き手への示唆
UdioがAudible Magicと組んで出力へのウォーターマーク技術を導入済みであることを答弁書で確認している点は注目に値する。訴訟に負けないためではなく、業界と共存するための布石として技術的対応を積み重ねているわけだ。
法廷の外では、AI音楽サービスがどれだけ誠実に権利者との対話を続けるかが、長期的な持続可能性を左右する。訴訟の結果がどうなろうと、「学習データに使われた」という事実はユーザーとして知っておく価値がある。