何が起きたか

7月30日、連邦裁判所のAraceli Martínez-Olguín判事は、音楽業界弁護士のドナルド・パスマンによる「オプトアウト申請」を却下した。これはBartz v. Anthropic PBC——Anthropicが著作権保護された書籍でClaudeを学習させたことをめぐる著者たちの集団訴訟——の和解承認と同時に下された判断だ。

AnthropicはClaudeの学習に、パスマンの著書 All You Need to Know About the Music Business(1991年刊行、50万部超)の10版を許可なく使用していた。和解の規模は15億ドル。クラスに参加した著者に対し、パスマンへの支払いはおよそ5,000ドルと報じられている。

パスマン側は「2026年2月のオプトアウト期限前に、個別の通知を受け取っていなかった」と主張した。彼を代理した弁護士はその責任を出版社のサイモン&シュスターに帰し、社内メールが「同社の担当者が和解の内容を把握していなかった」ことを示していると指摘した。

しかし裁判所は却下した。和解管理者の記録には、パスマンの住所に複数の通知が送付され、いずれも「未着」として返送されていないことが示されていた。判事はさらに、パスマンが4月の時点で自ら出版社に和解について問い合わせていた事実にも言及した。

なぜこれが重要か

パスマンが書いてきたものを考えると、この結末の重さは格別だ。

All You Need to Know About the Music Business は、音楽ビジネスにかかわる人間がほぼ全員通過する一冊だ。版権交渉、ロイヤリティ構造、レーベルとの契約——音楽業界で権利を守るために何が必要かを体系化してきた著者が、自分の本の使用についての同意を問われることなく、AIの学習データのひとつになっていた。

そして最新の第11版には、AIが音楽業界に与える影響を扱った章がある。その章の内容が、Claudeを訓練した素材の一部になっている。

この皮肉は単なる皮肉ではない。クラスアクションが「高名な著者」にとっても「無名の著者」にとっても同じ条件で機能するという構造的な問いを提示している。小さな書き手にとって、個別に訴訟を起こす資力も時間もない場合、集団和解は保護を提供しうる。しかし、独自の法的立場から個別交渉できたかもしれない人物が、裁判所が承認した「画一的な条件」に自動的に組み込まれるのは、同じ仕組みの別の顔だ。

論点・異なる見方

Martínez-Olguín判事は、「実質的な審理には入らなかった」という点は注意が必要だ。

判断の核心は「オプトアウト申請が手続き的に認められるか」であり、「AnthropicがパスマンのAIを学習に使ったことは合法か」ではない。パスマンが主張したかった本題——同意なしに著者の書籍を学習に使うことの是非——は、今回の決定では審理されていない。

サイモン&シュスターの「通知の不伝達」についても、責任の所在は曖昧なままだ。出版社が和解の通知を著者に適切に伝えるべきかどうか、また伝えなかった場合に誰が責任を負うかは、今後の訴訟でも議論になる可能性がある。

Anthropicは同時進行で別の著作権係争を抱えている。音楽出版社グループとの歌詞をめぐる訴訟では、権利者が大きな組織として独自のプロセスで戦っている。個人著者と組織的な権利者とで、AIとの交渉力に大きな非対称が存在することが、このふたつの訴訟の並走から見えてくる。

今後どう展開しそうか

15億ドルの和解は承認された。和解基金から各著者にどれだけ分配されるかは、対象作品の数や種類によって変わる。パスマンの場合の約5,000ドルという数字は、大量の著者が参加するクラスにおける「一冊の本の値段」が何を意味するかを示している。

より重要なのは、この判決が「裁判所承認の通知キャンペーン」の有効性を改めて認定したことだ。今後、別のAI企業が類似の集団和解を進める際に、この判例は「通知が届いたかどうかを個別に証明する必要はない」という根拠として機能しうる。

Anthropicの音楽出版社との係争はまだ続いている。著作権を個別に持ち、弁護団を揃えた出版社グループが、クラスの一員としてではなく独立した交渉者として戦う構図は、個人著者とはまったく異なる結末をもたらすかもしれない。

作り手・聴き手への示唆

自分の音楽や文章がどこかのAIに学習されているかもしれないと考えるとき、このニュースは別の問いを投げかける。もし学習されていたとして、それに異議を申し立てる機会があったか。通知は届いていたか。

クラスアクションの和解は、多くの場合、個々の権利者が独自に戦うより効率的な解決をもたらす。しかし「効率的な解決」は「公正な解決」と同じではない。パスマンのケースは、集団的なプロセスが個々の状況に対していかに鈍感でありうるかを示している。

音楽業界は長年、個々のアーティストの権利が出版社・レーベルとの力の非対称の中でどう扱われてきたかを経験してきた。AIをめぐる著作権の問題は、その非対称を新しい形で再演しているように見える。ただし今回の相手は、メジャーレーベルではなくAI企業だ。


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