アメリカン・フェデレーション・オブ・ミュージシャンズ(AFM)が7月24日、ニューヨーク南部連邦地方裁判所にUniversal Music GroupとWarner Music Groupへの修正訴状(First Amended Complaint)を提出した。被告には新たにWarner Records, Inc.とAtlantic Recording Corp.が追加されている。

6月5日の初回提訴から約7週間。裁判所が7月21日の事前協議でAFMに修正を許可したことを受け、組合はより精度の高い訴状で巻き返しを図った形だ。

何が問われているか

争点の核心は団体交渉協定(SRLA:Sound Recording Labor Agreement)の第21条、いわゆる「新用途(new use)」条項だ。

AFMの主張はシンプルだ——生成AIのトレーニングへの楽曲ライセンスは、SRLAが想定していない用途であり、そのような場合は組合員への追加報酬と組合への通知が義務付けられている。

UMGとWMGは2024年にSunoとUdioに対してそれぞれ著作権侵害訴訟を提起し、「AIが人間アーティストの仕事を大量のAI生成音源で置き換えようとしている」と訴えた。その後2025年末に両社はAIサービスとの和解に合意。UMGはUdioと「ライセンス型AIプラットフォーム」の構築で合意し(2025年10月)、WMGはUdio(2025年11月)、続いてSunoとの和解に署名した(2025年11月)。

AFMは、このAI訴訟で得た和解金と将来的なライセンス収益が、録音に参加した組合員に一切分配されていないと主張する。

大手レーベルの言葉との乖離

組合が訴状で引用しているのは、レーベル自身の言葉だ。

UMGはUdioとの和解を「アーティストとソングライターのために正しいことをするという約束」と説明した。WMGのCEOロバート・キンクルはSunoとの和解を「クリエイティブコミュニティ全体に恩恵をもたらす勝利」と呼んだ。

AFMはこれらを「自己賞賛の宣言」とした上で、「組合員を守ると主張しながら、実際に彼らの録音から得た和解金を分配していない」と指摘する。

ソニー・ミュージックはSunoともUdioとも和解しておらず、本件の当事者ではない。

レーベル側の反論

両社は訴え却下を求めており、それぞれ異なる法的解釈を示している。

UMGは7月7日の書簡で、SRLA第21条(a)は「すでに別のAFM協定でレートが定まっている新用途にのみ適用される換算規定」であり、AI学習への無条件の使用料規定ではないと主張した。

WMGは7月10日の書簡で、本訴訟を「団体交渉の場に司法の親指を置こうとする不適切な試み」と批判した。両社は現在、AFMとの次回SRLA改定交渉の最中にある——つまり、この訴訟はその交渉の圧力としても機能しているという見立てだ。

今後の日程は、レーベル側の申立書提出が8月14日、最終書面の締め切りが9月11日となっている。

AI和解の「果実」は誰のものか

この訴訟が照らしているのは、AI音楽ライセンスの構造的な問題だ。

大手レーベルが著作権侵害を訴え、和解金と引き換えにAI学習への合法的なアクセスを付与した——その取引の受益者はレーベルと株主だ。一方で実際に録音に参加したスタジオミュージシャンたちは、その過程で一切の情報も対価も受け取っていないとAFMは言う。

UMGとWMGが「アーティストのため」と語りながらもスタジオミュージシャンを飛び越えて交渉を完結させた構図は、業界の力学を端的に示している。さらにAFMとレーベル側が現在も交渉中のSRLA改定において、このスタンスがどう影響するかにも注目が集まる。

8月14日のレーベル側申立書が、争点の外形をさらに明確にするはずだ。


ソース: Music Business Worldwide(2026年7月28日)