何が起きたか

ソニーミュージックエンタテインメント(SME)が2026年7月20日、AI音楽生成プラットフォーム「Udio」を相手取り、新たな著作権侵害訴訟をニューヨーク南部地区連邦裁判所に提起した。今回の訴訟で主張される侵害対象は30,117件の録音物で、Arista Records、LaFaceなど9つの傘下レーベルも原告に名を連ねている。

この第2訴訟が生まれた経緯には、裁判所のやや逆説的な判断がある。Sonyはもともと2024年6月に提起した既存の訴訟に同じ楽曲群を追加しようとしたが、裁判所は6月29日にこれを却下した。ただし同時に「原告は侵害されたすべての著作権について救済を求める権利がある。ただし同一訴訟で行う必要はない」とも述べており、Sonyはこの言葉を根拠として別訴を起こした。

新訴状ではさらに、UdioがYT-DLPというツールを使ってYouTubeから音源を「ストリームリップ」し、プラットフォームの技術的保護手段を回避して学習データを収集したと主張している。UdioはYouTubeからの音声データ取得自体は認めているが、「フェアユース(公正利用)」にあたると反論している。

なぜこれが重要か

今回の訴訟で際立つのは、メジャーレーベル間での対応の分裂だ。

UMGは昨年Udoと和解し、ライセンス済みAI音楽サービスの開発に向けて協力体制に入っている。WMGも同様に和解・ライセンス契約を締結。Merlin、Kobalt、Believeといった独立系も続いた。一方でSonyは、他のメジャーがUdoとの協調路線に転じた後も、法廷での圧力を強め続けている唯一のメジャーレーベルとなった。

訴状の中でSonyは「Udoが遅まきながらライセンスを歓迎している姿勢は、最初から許諾なく著作権保護された録音物をコピーするという違法性をむしろ裏付けるものだ」と述べている。

論点と異なる見方

Music Allyの報道は「Sonyの姿勢は最終的に有利な条件で和解を引き出すための交渉戦術ではないか」という見方も紹介しており、業界内でもその解釈は分かれる。

実際、法廷での主張と最終的な着地点は別物だ。Udoは学習データとして「おそらくSonyの楽曲が含まれていた」と訴状答弁の中で認めており、無許諾での学習という事実自体の争いはすでに論点ではなくなりつつある。焦点は損害額と条件の交渉に移っている可能性が高い。

ただし、3万件超を「侵害された録音物のごく一部にすぎない」と訴状が記している点は重要で、Sonyが法的圧力のカードをまだ手元に多く持っているとも読める。

今後の展開

UMGとWarnerが和解した後も戦線を維持するSonyの判断は、Udoにとっての「完全な合法化」に向けた最後の壁となっている。Udoは現在、ライセンス済みの新サービス開発を進めているとされるが、Sonyとの訴訟が未解決のまま事業を拡大し続けることは、法的リスクとして残り続ける。

短期的には、この第2訴訟がSonyとUdoの交渉テーブルを動かすきっかけになる可能性もある。ただし、その条件や時期は外部からは見えない。

作り手・聴き手への示唆

UdoユーザーであるAI音楽クリエイターにとって、今日明日でサービスが変わるわけではない。だがUdoをとりまく訴訟の構造は、AI音楽ツール全体の「正当化」プロセスを映す鏡でもある。

メジャーレーベルが次々とAIプラットフォームとライセンス契約を結んでいるという事実は、「無許諾学習=産業破壊」という初期の対立構図が、すでに実用的な協調の枠組みへと移行しつつあることを示している。Sonyが最終的にどのような条件でテーブルにつくかは、残る係争中のケース(SunoへのUMG・Sony訴訟など)の行方にも影響を与えるだろう。


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