DeezerのAI楽曲アップロードが初めて50%超に──「過半数」が意味すること、意味しないこと
7月21日、Deezerは同プラットフォームへの日次新規アップロードのうちAI生成楽曲が初めて50%を超えたと発表した。1日あたり9万曲が流入しているが、実際のストリームは全体の1〜3%にすぎない。
2026年7月21日、Deezerは衝撃的とも言える数字を公開した。同プラットフォームへの1日あたりの新規アップロードのうち、AI生成楽曲が初めて50%を超えた。現在、毎日約9万曲のAI生成トラックが流入しているという。
この数字は1年半前と比べると劇的だ。2025年1月には1日あたり約1万曲だったAIアップロードが、9倍になっている。
何が起きたか
Deezerが公表したデータによれば、AI生成楽曲の日次アップロード数は2025年1月の約1万曲から、2026年4月に7万5,000曲、そして2026年7月には9万曲超へと急増した。新規アップロードに占める割合は4月時点で44%だったが、今回初めて過半数を超えた。
ただし、同社が同時に明らかにした別の数字が重要だ。AI生成楽曲がDeezer全体のストリーム数に占める割合は、わずか1〜3%にとどまる。さらに、AIによる楽曲のストリームのうち最大85%が詐欺的ストリーミング(フラウド)によるものだという。
つまり「AI楽曲が新規アップロードの過半数」というのは、聴かれているという意味ではない。
Deezerの対応
同社CEOのAlexis Lanternierはこう述べた。「私たちはここで転換点を迎えました。しかし、この動向を把握する技術があり、正しいことをするという意思もあります」。
Deezerが発表した具体的な対応は以下の通り。
- 6ヶ月以上ストリームされていないAI楽曲の削除
- 詐欺的ストリーミングと検出された楽曲の削除
- AI楽曲へのタグ付けを継続し、アルゴリズム推薦や編集プレイリストから除外
同社は2026年6月にはすでに27言語対応のAI楽曲検出ツールを導入しており、今回の措置はその延長線上にある。
なぜこれが重要か
「アップロードの過半数がAI」というマイルストーンは、象徴的な意味を持つ。プラットフォームに流入するコンテンツの多数派がAI生成になったという事実は、音楽配信の基盤設計の前提を変えつつある。
Deezerだけの問題ではない。Spotifyは2025年に7,500万曲以上のスパム的なトラックを削除したと報じられており、Apple Musicでは月次アップロードの3分の1以上がAI生成だが、ストリームへの貢献は0.5%未満だという。どのプラットフォームも構図は同じだ──AIによるアップロードの洪水と、それが実際の聴取につながらないという現実。
これは「AIが音楽を支配した」という話ではなく、「アップロードのインフラが詐欺とスパムで埋まっている」という問題に近い。
論点:誰のための「対策」か
Deezerの対応方針は一見合理的に見えるが、疑問も残る。
「6ヶ月未ストリームで削除」というルールは、AI生成かどうかに関わらず、多くの人間アーティストの作品も対象になりうる。インディーズアーティストがひっそりと公開した楽曲が、発見される前に削除される可能性も否定できない。
また、アルゴリズム推薦から除外するというポリシーは、AI楽曲を発見する機会を組織的に制限することを意味する。AI音楽を積極的に作り、聴かれることを望んでいるアーティストにとっては、実質的なペナルティだ。
一方、85%がフラウドだというデータが正確なら、AI楽曲の多くは「人間が聴くため」ではなく「ロイヤリティ詐欺のため」に存在している。その問題への対処と、本物のAI音楽クリエイターの扱いは、分けて考える必要がある。
今後どう展開しそうか
Deezerのデータ公開は業界全体への警鐘でもある。他のプラットフォームも同様の数字を抱えているはずで、各社の対応方針の違いが今後明確になっていくだろう。
「何がAI生成か」をどう定義し、どう表示し、どう流通させるか──RIAA・IFPIが推進するラベリング標準化の議論も、こうした現場の数字が後押しする形で進むと見られる。
ただし、AI検出技術が現在進行形で進化しているように、アップロードの手法も進化する。苺とモグラたたきのような構図が続く可能性は高い。
作り手・聴き手への示唆
この数字を読んで「もうAI音楽が主流だ」と感じる人と、「AI楽曲のほとんどは聴かれていない」と読む人とで、受け取り方は大きく違うだろう。
実態は後者に近い。AI生成の洪水は、プラットフォームのインフラ問題であって、リスナーの耳に届いている音楽の話ではない。
とはいえ、その洪水の中で誠実に作った音楽が埋もれるリスクは、AIを使うかどうかに関わらず全アーティストに等しく存在する。発見されるための手段を考え直す必要性は、今後さらに高まるかもしれない。
Source: AI-generated music is now more than half of Deezer's uploads – Music Ally