Spotifyが、過去12ヶ月でスパム扱いのAI生成楽曲を7500万曲以上削除したと明らかにした。同社でマーケティング・ポリシーを統括するSam DuboffがRolling Stoneに語ったもので、スパム対策としては音楽ストリーミングの歴史上最大規模の削除となる。

ただし、Duboffはこうも述べている。「AIはスパムの手口を新しく発明したわけではない。既存の手口をはるかに容易に大規模展開できるようにしただけだ。」


何が起きているか

Spotifyには現在、1日あたり約10万曲が新たにアップロードされている。その大部分がAIツールで生成されたものとされるが、問題はAI生成そのものではない。Spotifyが対象とするのは「スパム」と定義したコンテンツだ。

具体的には——大量・一括アップロード、楽曲の複製と微改変、SEO目的のメタデータ操作、ロイヤリティ取得を狙った異常に短い楽曲の乱用、いわゆる「スロップ(低品質コンテンツ)」と呼ばれる大量生成物。これらは、AIが安く速くなる前から存在したフォーミュラで収益を得ようとする行為であり、Spotifyはこれをロイヤリティ詐欺として排除する立場を取る。

音楽プロダクト担当VP Charlie Hellmanはこう語る。「私たちはアーティストが誠実かつ責任をもってAIを使うことを罰するためにここにいるのではない。」


Spotifyが取る対応

削除に加え、同社は複数の施策を展開している。

ラベリング:DDEX(デジタル音楽業界の標準化団体)が策定中の表記基準を採用し、楽曲がAI生成かAI支援かをアーティストが申告できる仕組みを整備する。「AIの利用をスペクトラムとして捉えている、二項対立ではなく」というのが同社のスタンスだ。

ボイスクローン禁止:権利者の許可なく声を複製した楽曲は即時削除の対象となる。

機械学習によるスパム検出:大量アップロードや重複パターンを検知するフィルタリングシステム。

ロイヤリティ遮断:スパムと判定された楽曲は削除されるのではなく「アルゴリズム推薦の対象外」となる。ストリーム数の水増しによるロイヤリティ搾取を防ぐための措置だ。


なぜ重要か

7500万曲という数字は衝撃的だが、より重要なのはSpotifyが何を「線引き」に選んだかだ。

「AI=NG」とはしなかった。正当な創作意図がある限り、AI生成の音楽はプラットフォームに存在できる。一方、詐欺的な手口でロイヤリティプールを食い荒らすコンテンツは排除する——この分離は、AI音楽をめぐる議論に「禁止か否か」以外の軸を持ち込んでいる。

同様の問題はSpotifyだけではない。Deezerは「AI楽曲が日々のアップロードの半数近くを占める」と報告しており、同社は99.8%の精度を謳う検出ツールを独自開発している。


論点

この「スパム排除」路線に対しては、いくつかの異なる見方がある。

支持する立場は、AI音楽を一律禁止せずロイヤリティ詐欺に絞って対処することを評価する。AI音楽が文化的価値を持ちうるという立場からすれば、むしろ正しい分離だ。

懸念する立場は、「スパム」と「誠実なAI音楽」の線引きが恣意的になる可能性を指摘する。誰がその判定を下すのか、基準はどう透明化されるのかが問われる。

業界(レーベル・アーティスト側)は、7500万曲という数字そのものが問題の深刻さを示すと見る。既存のロイヤリティ構造が根本的に変わらない限り、スパム業者はルールを迂回し続けるとの声もある。


今後

Spotifyのこの方針は「第一歩」に過ぎない。DDEXによるラベリング基準は業界全体への普及を目指しているが、任意参加では実効性に限界がある。また、RIAA・IFPI・レコーディング・アカデミーが共同で導入した自主的なラベリングプログラムとどう連携するかも今後の焦点だ。

Spotifyが示したのは、AI音楽との共存を設計する意志だ。ただし「設計図」はまだ完成していない。


Source: Spotify Embraces AI Music With New Policies, While Combating 'Spam' and 'Slop' — Rolling Stone