「模倣はノー、オリジナルならいい」——ジャガーとリチャーズが示したAI音楽の条件
Billboard誌のカバーストーリーでミック・ジャガーとキース・リチャーズがAI音楽について語った。2週間前に「ゴミだった」と言ったジャガーが今回示したのは、もう少し精密な線引きだ。問題はAIそのものではなく、『模倣』にある。
2週間前、ミック・ジャガーはタイムズ紙のインタビューでAIのアルバムタイトル案を「ゴミだった、まったく役に立たなかった」と切り捨てた。
今週、Billboard誌のカバーストーリーでジャガーとキース・リチャーズは再びAIについて言及した。ただし今回の文脈は異なる。彼らが語ったのは「AI音楽そのものの是非」だ。
何が起きたか
Billboard誌が2026年7月16日に公開したカバーストーリー(取材・執筆:Joe Lynch)で、ローリング・ストーンズの二人はAI音楽について言及した。
ミック・ジャガーは、AIが自分たちの音楽を模倣することには明確に反対を示した。
「当然、自分がAIによって声や演奏を模倣されることは望まない。もしあなたが何らかのクリエイティブな人間なら、そんなことはしないはずだ」
一方で彼は、AI音楽そのものを全面否定してはいない。
「誰かがAIで音楽を作りたいなら、やればいい。ただし、それはオリジナルでなければならない——自分自身のインプットと自分自身の考えが必要だ」
キース・リチャーズの言葉はもう少し大きな射程を持つ。
「音楽は、自分自身をコピーするよりずっとうまくできるはずだ……私たちは新しいインプットを求めている」
なぜこれが重要か
7月7日の「ゴミ」発言との対比が興味深い。前回の発言は「AIをツールとして使ったが役に立たなかった」という個人的な体験談だった。今回は「AI音楽という文化的実践の是非」という話になっている。
ジャガーの立場をまとめると、こうなる。
- ローリング・ストーンズの模倣:明確にノー
- AIで「オリジナル」の音楽を作ること:条件付きでOK
この「模倣vs.オリジナル」の区別は、現在進行中のSuno・Udio訴訟でも核心的な論点の一つだ。レコード会社側は「学習データとして既存楽曲を無断使用した」と訴え、AI企業側は「生成される音楽は元の楽曲とは別物」と主張している。ジャガーが言う「オリジナルならいい」は、後者の主張と重なる部分がある。
論点・異なる見方
ただし「オリジナルであること」の定義は曖昧だ。
AIが既存アーティストの膨大な楽曲を学習したうえで生成した音楽は、「オリジナル」なのか。リチャーズの言う「コピーするな」は学習データの問題に言及しているのか、それとも生成される出力の問題を指しているのか。インタビューからは判断できない。
「あなたがクリエイティブな人間なら模倣はしないはずだ」というジャガーの言葉も、解釈が分かれる。これは倫理的な主張なのか、美学的な主張なのか。AI音楽を使うユーザーの多くは、The Rolling Stonesのコピーを作ろうとしているわけではない。
AI音楽に批判的な立場からは、「有名ミュージシャンが懸念を示した」という事実だけが切り取られやすい。推進側からは「条件付きで容認している」という部分が強調されるだろう。どちらも発言の一部を正確に反映している。
今後どう展開しそうか
ジャガーとリチャーズのような発言は、業界内での「AI音楽とどう付き合うか」という議論の指標になりやすい。彼らが「模倣はノー、オリジナルはOK」という線引きを示したことで、同様の枠組みで語るアーティストが増える可能性がある。
ただし、その線引きが法的に、あるいは技術的にどこに引けるかは別の問題だ。AIツールは「オリジナル」を保証する仕組みを持っていない。
作り手・聴き手への示唆
ジャガーの「自分自身のインプットと考えを持て」という言葉は、AI音楽の作り手に向けた最もストレートなメッセージに聞こえる。これは技術的な話ではなく、姿勢の問題だ。
誰かの声や様式をAIで再現する行為と、AIをツールとして使いながら自分の音楽的な意思を込める行為の間には、確かに違いがある。その違いを意識しながら使うかどうかが、今後のAI音楽コミュニティの文化的な成熟度を測る一つの基準になるかもしれない。
参照:
- The Rolling Stones Talk Touring, New Album, AI & Songwriting — Billboard(Joe Lynch、2026年7月16日)