Jamendoが予告していたもう一方の訴訟が動いた。

音楽ライセンス会社Jamendo(Winamp GroupのCEO)は6月29日、AI音楽生成サービスSunoをマサチューセッツ州連邦地裁に提訴した。Nvidiaをカリフォルニアとベルギーでそれぞれ訴えてからわずか1週間後のことだ。


何が起きたか

訴状の中心にあるのは、今回もMTG-Jamendoデータセットだ。5万5,000曲超の音声トラックを収録したこのデータセットは2019年頃に公開されており、ライセンスは「非商用研究・学術利用のみ」に限定されている(商用利用にはJamendoの書面による許可が必要)。

Jamendoが具体的に名指しするのは、Sunoがかつてオープンソースとして公開していた初期モデル「Bark」だ。訴状によれば、Barkの学習に約919時間分のJamendo音声が使用されていたという。

法的根拠は4件:著作権侵害、契約違反、不当利得、マサチューセッツ州法に基づく不公正な取引慣行。

請求額は「少なくとも」1,780万ユーロ——または、故意の侵害が認定された場合は1作品あたり最大15万ドルの法定賠償だ。

訴訟に至る経緯も訴状に記されている。Jamendoは2025年9月29日にSunoへ請求書を送付し、Sunoは10月3日に受領を確認した。10月14日に正式なデフォルト通知を送ったものの、解決には至らなかった。


なぜこれが重要か

Nvidia訴訟では「AIインフラ企業がデータを転用した」という構図だった。今回の相手はSuno——音楽生成AIの最前線にいる企業だ。

注目すべきは、Jamendoが具体的な技術事実を訴状に組み込んでいる点だ。「Barkモデルの学習に919時間分のデータが使われていた」という主張は、単なる「無断使用の疑い」ではなく、実際の学習パイプラインに踏み込んだ内容だ。Barkはかつてオープンソースとして公開されていたモデルであるため、学習データの証拠はある程度追跡可能だった可能性がある。

Sunoはすでに大手レーベルとのライセンス契約(WMGなど)を結んでいる。ただし、訴訟が対象にしているのは「現在のSuno」ではなく「Barkを開発していた頃のSuno」だ。後から結んだライセンス契約は、過去の学習行為の直接的な防御にはならない。


論点

Sunoは公式にはまだ回答していない。

Jamendoの戦略には注目すべき点がある。NvidiaとSunoという性格の異なる2社に1週間以内に提訴することで、「MTG-Jamendoデータセットを使ったすべての商用AI開発」に対して包括的なプレッシャーをかける形になっている。

法廷でまず問われるのは、Barkの学習データにJamendoの音声が含まれていたかどうかの事実認定だろう。Barkのオープンソースコードや学習ログが証拠として機能するかが鍵を握る。

「研究用データを使ったAI開発」がどこまで「非商用研究」に当たるかという問いは、Nvidia訴訟と同じ構造を持つ。ただしSunoの場合、BarkがSunoという商業サービスの基盤になったという点で、商用性の問いはより直接的だ。


今後の展開

Sunoは現在、音楽レーベル側(RIAA経由)との訴訟も抱えている。そこに今回のJamendo訴訟が加わった。学習データをめぐる法的手続きが複数のフロントで同時進行することで、法務リソースへの圧力は増す。

短期的には、Barkモデルの学習データに関する開示請求が焦点になるとみられる。RIAAとの訴訟では学習データの開示をめぐる争いが続いており、その手続きの行方が今回の訴訟にも影響を与えるだろう。

「非商用データセットの研究コミュニティへの公開」と「商用AI開発」のあいだにある境界線は、まだ法的に定まっていない。JamendoはNvidiaとSunoという2つの裁判を通じて、その線引きを法廷に委ねた。


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