プロダンスリーグ「D.LEAGUE」に所属するCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)が、ElevenLabsのAI音楽生成技術を使って制作したオリジナル楽曲を、7月23日に豊洲PITで開催するワンマンライブで披露することを発表した。

何が起きたか

CyberAgent Legitは、株式会社サイバーエージェントが運営するプロダンスチームで、D.LEAGUEで4年連続レギュラーシーズン優勝を果たしている。2024年には英国のオーディション番組「Britain's Got Talent」でGolden Buzzerを獲得し、国内外で注目を集めている。監督はRADIO FISHとしてNHK紅白歌合戦に出場経験を持つFISHBOYが務める。

今回の取り組みでは、チームがElevenLabsのAI音楽生成技術を活用してオリジナル楽曲を制作し、7月23日のワンマンライブのパフォーマンスで使用するという。ダンス、音楽、演出を融合させるライブパフォーマンスの中で、AIを創作プロセスの一部として取り入れる試みだ。

なぜこれが重要か

監督FISHBOYの発言が、このニュースの核心を突いている。

「ダンスは音楽とともに育ってきた表現でありながら、ダンサーはこれまで『誰かが作った音楽に乗って踊る』立場でした」

ダンサーは長年、既存楽曲を使ってパフォーマンスを作り上げてきた。その制約の中で表現を磨いてきたとも言えるが、自身のビジョンに完全に合った楽曲を持てる機会は限られていた。AI音楽生成ツールは、その構造を変える可能性を持っている。

ElevenLabsジャパンのJack Teramulaも、AI音楽生成が「これまで音楽を利用する側だった人たちが、自ら楽曲を制作し、その権利を持てるようになる可能性」を指摘している。聴き手が作り手になる動きは、今やダンサーにも広がりつつある。

ElevenLabsを「あえて選んだ」理由

FISHBOYが記者コメントで触れた一点が興味深い。多くのAI音楽サービスが「学習データの権利処理という壁に直面する中で、権利者と正面から向き合い、合意の上で作られたサービスだった」としてElevenLabsを選んだというくだりだ。

AI音楽をめぐる著作権・学習データの問題は、業界全体でまだ答えが出ていない。その中で、使用するツールの由来を意識的に選ぶというアクションは、単なる利便性の話ではない。

論点

「AI生成楽曲をライブで使う」ことへの反応は、立場によって分かれるだろう。既存の作曲家・音楽家の視点から見れば、プロチームが商業ライブでAI楽曲を使う事例が増えることへの懸念もある。一方、ダンサー側の「自分たちのパフォーマンスに最適化された楽曲を持ちたい」というニーズは理解できる。

FISHBOYはこうも言っている。「AI生成が音楽のすべてを代替することはありません。楽曲の価値の根幹はストーリーとライブ感にあるからです」。ダンサーはAIと共に作った楽曲に、ダンスでそのストーリーとライブ感を与えられるという主張だ。この考え方自体は一つの誠実な答えだと思う。ただ、すべての人が同意するわけではないし、そうでなくていい。

今後どう展開しそうか

7月23日のライブで楽曲がどう受け取られるかが、最初の試金石になる。「AI楽曲 × トップダンスパフォーマンス」という組み合わせが、観客にどう響くか——それはデータではなく、体感でしか分からない。

ElevenLabsとCyberAgent両社にとっても、この取り組みは実証実験の側面がある。プロスポーツチームがAI生成楽曲をライブ演目に使う事例は国内でも珍しく、今後の「AI × パフォーマンスアート」の文脈で参照されることになりそうだ。

作り手・聴き手への示唆

「踊る人が音楽を作る」時代が来るとしたら、音楽と身体表現の境界は今よりずっと曖昧になる。それはゼロから全部作るという話ではなく、自分のパフォーマンスに合わせて音を選び、形にする余地が広がるということだ。

AI音楽ツールをどう使うか、そして何のために使うか——CyberAgent Legitの今回の選択は、その問いに対する一つの具体的な答えを見せようとしている。


ソース: CyberAgent LegitがAI音楽生成技術でオリジナル楽曲制作へ 豊洲PITでのワンマンライブで披露|Real Sound テック