AI音楽が増えれば増えるほど、それに対する反発も強くなる——そんな傾向を裏づけるデータがオランダから届いた。

何が起きたか

オランダの音楽・映画業界団体NVPIが6月24日に発表した「Muziekmonitor 2026」は、13歳以上の2,000人を対象にGfKが実施した大規模調査だ。

結果のうち、AI音楽に関連する数字を整理すると次のようになる。

「音楽は人間が作るべき」と思う割合

  • 2024年: 68%
  • 2025年: 71%
  • 2026年: 78%

「AIが作った音楽にはラベルをつけるべき」と思う割合

  • 2024年: 59%
  • 2025年: 68%
  • 2026年: 76%超

毎年増え続けるAI音楽の存在感と、それへの抵抗感が、ほぼ同じペースで強まっている。

なぜこれが重要か

今回の調査は、AI音楽への世論の向き合い方をデータで定量化した珍しい事例だ。「なんとなく嫌だ」という感覚論に根拠を与える数字が、年をまたいで追跡されている。

NVPI広報のEva de Vroeメ氏は、調査結果について「本物志向への需要は強い。ストリーミングプラットフォームにAI楽曲が溢れていることと無関係ではないだろう」と述べた。

ストリーミング側の状況は、その言葉を裏づけている。Deezerによれば、現在は1日に約7万5,000曲の完全AI生成楽曲がアップロードされており、これは1日あたりの全アップロード数の半数近くに相当するという。Spotifyは人間アーティストであることを示すグリーンのチェックマーク制度を導入した。

著作権管理団体BumaStemraの商業ディレクター、Michiel Laan氏は「透明性は欠かせない。人々は自分が何を聴いているか知る権利がある」と断言。BumaStemraはDeezerと協力してAI生成楽曲の審査を行っており、「Sunoで作られた」と判明した楽曲の投稿者と個別に対話を行っているという。

論点・異なる見方

注意しておきたいのは、この調査はあくまでオランダ国内の世論であるという点だ。ヒップホップやR&B、ダンス・電子音楽では抵抗感が相対的に低く、ジャズやクラシックのリスナーで最も高い——という内訳は、ジャンルによってAIとの距離感が異なることを示している。電子的なプロダクションがすでに文化として根付いているジャンルでは、「AIが作った」という事実の重みが違って受け取られる。

ラベリングへの要求も、「AIを排除したい」というより「何を聴いているか知りたい」という透明性への要求として読むべきだろう。Laan氏は「現在の状況は不透明で不均一だ」としたうえで、欧州全体での規制が必要だと述べた。フランスはこの分野でEU内でも先行しているという。

今後どう展開しそうか

ラベリングを自主的に進めるプラットフォーム(Deezer)と、慎重な姿勢を保つプラットフォームがある現状では、規制に頼らない限り一貫した透明性は期待しにくい。BumaStemraがストリーミングプラットフォームとの契約更改(2年ごと)でAIを中心議題として取り上げていることは、業界交渉の構図が変わりつつあることを示している。

欧州AI法(EU AI Act)の施行が段階的に進む中、AI生成コンテンツへの透明性要件がどこまで音楽配信に適用されるかは、今後の焦点になりうる。

作り手・聴き手への示唆

この調査が示すのは、「人間が作った」という事実自体が、リスナーにとって価値のある情報になりつつあるということだ。Spotifyのグリーンチェックマークはその具体例だが、そうした「人間性の可視化」は今後、アーティストにとって受動的な証明書ではなく、積極的に伝えるべきアイデンティティの一部になっていく可能性がある。

AI楽曲が1日7万5,000曲アップロードされる時代に、「人間が作った」は希少性のシグナルでもある。


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