音楽家は、自分の作品が「使われるたびに」対価を受け取ることに慣れてきた。レコード売上、ストリーミング、ラジオ、カラオケ——何が「使用」に当たるかは違っても、使われるほど収益が生まれるという経済原理は共通している。

AIはその定義を複雑にした。学習データとして使われるのは「一度きり」なのか。それとも、モデルが出力するたびに音楽家の表現が関与しているのか。

IEEE Spectrumが6月17日に掲載した特集記事は、この問いに向き合う二つのアプローチを取り上げた。


Sureelのモデル:学習時に追跡し、使用量に応じて課金する

Warner Music Groupが先日買収したアトリビューション技術スタートアップのSureelは、スウェーデンの著作権管理団体STIM(Svenska Tonsättares Internationella Musikbyrå)とパイロットプロジェクトを進めている。STIMは2025年9月、Sureelと共同で「世界初の集団的AI音楽ライセンス」を立ち上げた。

仕組みはこうだ。SureelのソフトウェアはSTIM加盟のアーティストが明示的に同意した楽曲に「インストラクション」を付与する。AI企業はその楽曲を学習に使う際、どの曲をどの程度使ったかをトレースされ、それに応じたライセンス料を支払う。楽曲ごとに「自由に使ってよい」「影響を制限せよ」「使用禁止」といった設定が可能だ。

STIMが2028年までにAI開発によって音楽クリエイターの収益の最大24%が希薄化するリスクがあると指摘している中、ライセンスによる「先手」を打つという判断だ。

Sureelの共同社長ベンジ・ロジャース(Benji Rogers)はIEEEの取材にこう述べた。

「アトリビューションとは、昔の経済モデルを再現することではない。昔の経済モデルが近似でしか測れなかったものを、初めて正確に計測することだ」


SoundVerseのモデル:生成のたびに貢献度を計算する

AI音楽会社SoundVerseは別の視角から問題に迫る。同社の共同創業者らが2025年に発表したホワイトペーパーは、「一括ロイヤルティ買い取りは不十分」という立場を明確にしている。

SoundVerseが提唱するのは、AIが楽曲を生成するたびに「その出力に各学習データがどの程度寄与したか」を計算し、比例配分するモデルだ。たとえばジャズに近い楽曲が生成されれば、学習データのうちジャズに近いものへの貢献度が高くなる。

理念的には筋が通っている。だが、技術的には極めて困難な問題でもある。


何が難しいのか

SureelのCEO、タマイ・アイクト博士(Dr. Tamay Aykut)は「帰属の核心は類似性ではなく因果関係だ」と言う。ある楽曲が学習データに含まれていて、出力が似ているように見えたとしても、それが本当にその楽曲から学んだ結果なのかを証明することは、ディープラーニングモデルの構造上、非常に難しい。

UdioのCEO、アンドリュー・サンチェス(Andrew Sanchez)はこう述べている。

「AIモデルは大量の楽曲を片っ端から聴いて、少しずつつなぎ合わせているわけではない。だから学習データと出力を直接結びつけようとすれば、非常に難しい——もしかしたら不可能な問題になる」

もうひとつの懸念は「ゲーミング」だ。ロイヤルティが学習データへの貢献度で決まるとすれば、ロイヤルティを最大化するために設計された楽曲が現れるかもしれない。ストリーミングがイントロを短くさせたように、アトリビューションモデルが別の歪みをもたらす可能性がある。

SourceAudio社長のドリュー・シルバースタイン(Drew Silverstein)は「アトリビューションは明快な答えに見えるが、AIにおいてはそれが機能しない部分がある。別のモデル——シンプルな合意による年次更新の支払いなど——を検討すべきだ」と述べる。


帰属技術が解けない問いを解くのは、人間の制度設計かもしれない

IEEEの記事が示したもうひとつの論点は、モデルの多様化だ。SunoやUdioのような大規模モノリシックモデルだけでなく、IRCAMの「RAVE」やJenの「Style Filters」のような小規模・特化型モデルが注目されている。規模が小さければ、学習データの出所と貢献度の追跡はよりシンプルになりうる。ミュージシャンのコレクティブが共同でカスタムモデルを構築し、公平な分配ルールを設定するというシナリオも現実味を帯びる。

ただし、どれほど精巧なアルゴリズムであっても、それを支えるのは人間の意思決定だ。「何が公正な分配か」を決める枠組みは、技術だけでは生まれない。ロジャースは「アトリビューションは多層的で監査可能でなければならない。専門家と規制当局の精査に耐えられるものでなければ意味がない」と言う。

ライセンス訴訟から私的交渉へと業界の重心が移りつつある今、「使われた分だけ払う」仕組みをどう設計するかの議論に充てられる時間は、思ったより短いかもしれない。


作り手へのメモ

学習データへの貢献とロイヤルティを結びつける技術が完成するかどうかは、まだわからない。ただ「そのための制度設計の議論が始まっている」という事実は、AI音楽の未来にとって意味がある。

もし「使われたら払う」モデルが機能するなら、AIと音楽家は少なくとも利害を共有できる。そうでなければ、この問いはずっと法廷で続くことになる。


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