Winamp Groupの子会社Jamendoが、Sunoに対して起こしていた著作権侵害訴訟を8月13日に自主的に取り下げた。提訴からわずか6週間での撤退だ。Music Business Worldwideが報じた。

何が起きたか

JamendoはマサチューセッツのUS地方裁判所に「任意却下通知(notice of voluntary dismissal)」を提出した。取り下げは「without prejudice(不利益なし)」、つまり同じ主張で再提訴する権利を留保した形だ。

訴訟の中心にあったのはMTG-Jamendoデータセット——55,000曲以上のJamendoカタログをまとめたもので、2019年頃に公開された研究用データセットだ。Jamendoはこれを非商業的な研究目的に限定し、商業AIへの利用にはライセンス購入を義務付けていた。Sunoがこのデータを無断で学習に使ったと主張し、6月29日に提訴。7月末に訴状を修正したのち、約2週間後に撤回した。

取り下げの理由は記載されていない。和解の有無についても、Jamendo・Winamp Group・Sunoのいずれも取材時点でコメントしていない。

ほぼ同時期、インストゥルメンタルデュオ「The American Dollar」を運営するPoseidon Wave Mediaも、別途Sunoに起こしていた訴訟を取り下げた。こちらは「with prejudice(再提訴不可)」での終結だ。

なぜこれが重要か

Sunoをめぐる法的状況は、ここ数週間で急速に動いている。GEMA(ドイツの著作権管理団体)との裁判では7月31日にSunoが敗訴。一方でSunoは8月6日に「責任あるAI原則」を公表し、オーディオウォーターマーキングの導入方針や大量配布を制限する新しいダウンロードポリシーを打ち出した。さらに8月12日にはBMGとのグローバルライセンス提携を発表し、Warner Music Groupとの2025年11月の和解に続く形で業界との関係修復を進めている。

Jamendoの取り下げは、この流れの中で起きた。Sunoが「正面突破」から「交渉と連携」に軸足を移す過程で、対立の構図が少しずつ溶け始めているように見える。

論点・異なる見方

取り下げ理由が不明な以上、解釈は慎重にする必要がある。

楽観的に読めば、Sunoの最近の動き——ウォーターマーキング、ダウンロード制限、ライセンス契約——がJamendoの主張の実質的な懸念に応えたとみることもできる。あるいは、訴訟を維持するコストに対して勝訴の見通しが立ちにくいと判断したのかもしれない。

一方でUMGとSonyはマサチューセッツでの主要訴訟を継続しており、録音物6万1,026件の追加申請もSunoが争っている。証拠開示は9月30日に締め切られ、2027年4月には申立の判断が下る予定だ。欧州ではデンマークのKodaが別途提訴を続けている。個別訴訟が取り下げられても、業界全体としての法的問いかけは続いている。

今後どう展開しそうか

Jamendoは再提訴の権利を持ったまま退場した。BMGとのライセンス合意が示すように、Sunoはより多くの権利者と「和解して前に進む」構造を作ろうとしているようだ。今後、他の小規模な提訴者も同様の判断をするケースが増えるかもしれない。

ただし、UMG・Sonyとの主要訴訟と、GEMA判決の行方は別の話だ。今後数ヶ月の法廷での動きが、業界全体のAIライセンスの枠組みを左右する。

作り手・聴き手への示唆

法的な霧が少しずつ晴れていく——とまでは言えないが、輪郭は見えてきた。Sunoのような主要プラットフォームが大手と次々に合意し、独立系の訴えが取り下げられていく流れは、AI音楽が「グレーゾーン」から「ライセンスのある産業」へ移行しつつあることを示唆する。それが作り手にとっていいことかどうかは、どんな条件でライセンスが結ばれるかによる。現段階では、まだ詳細はほとんど公開されていない。


Source: Music Business Worldwide