AI音楽生成プラットフォームのSunoが8月12日、BMGとのグローバルライセンス契約を締結したと発表した。BMGが「BMGのレコーディングおよび音楽出版レパートリーをカバーする戦略的枠組みを確立するグローバル・アライアンス」と表現するこの契約は、過去にSunoが学習に使用したBMG音源についての清算も含む。

何が起きたか

SunoがWarner Music Group(WMG)とライセンス合意を発表してから約9ヶ月。今回のBMGとの契約は、それ以降で初となる主要レーベルとの合意だ。

契約にはアーティストと作曲家が参加を「選択できる」オプトイン要素が含まれており、参加者の権利保護と報酬が約束されている。また、BMGはSunoが開発中の新しいモデル群の共同開発パートナーとなる。このモデルは「音楽業界と連携して開発された」ものとして今後リリースされる予定だ。WMGも同様のパートナーシップに参加している。

一方、UniversalMusicGroup(UMG)とSonyMusic Groupは、依然としてSunoに対する著作権侵害訴訟を米国で継続中だ。両社はSunoが過去のモデル学習において広範な著作権侵害を行ったと主張している。BMGが訴訟を選ばず交渉テーブルについたことは、同業他社との姿勢の対比において注目に値する。

なぜ重要か

SunoをめぐるAI×音楽業界の構図は、「全面対決かゼロか」から少しずつ変化している。WMGとの和解、Musixmatch Sentinelの採用によるコンテンツ監視強化、ダウンロード上限の設定——一連の動きに今回のBMG合意が加わることで、Sunoが「業界と共に作るAI音楽」というポジションを積み上げようとしていることがわかる。

Suno共同創業者兼CEOのMikey Shulmanは「アーティストとファンをつなぐ新しい体験を構築するためには、音楽を作る人々と直接連携することが不可欠だ」と述べた。BMGのEVPであるCeline Joshuaも「AIにおける未来は、アーティストと作曲家が機会の中心に居続け、創出される価値を共有できるかどうかで決まる」と言及している。

論点と異なる見方

アーティストにとっての「オプトイン」は真の選択か。
契約はBMG所属アーティストに「参加か不参加かの選択肢」を与えるとしている。ただし、オプトインの実態や報酬額の透明性はまだ公開されていない。レーベルが大枠の合意を結ぶ一方、個々のアーティストがどこまで自律的に判断できるかは今後の焦点になるだろう。

UMG・Sonyの対応との非対称。
BMGがテーブルについたからといって、UMGやSonyが同じ方向に動くとは限らない。両社が訴訟を継続する限り、Sunoの次世代モデルは"一部の業界と連携して作られたもの"にとどまる。学習データの範囲と透明性が問われ続けることには変わりない。

GEMAの敗訴と欧州規制との関係。
先月、ドイツの著作権管理団体GEMAとの裁判でSunoは敗訴しており、EU AI法の透明性要件への対応も求められている。今回の合意はそのプレッシャーへの対応でもある、と読むこともできる。

今後の展開

BMGは現在、Concordとの複数十億ドル規模の合併を進めており、Q4のクローズが予定されている。合併後はBMG+Concordで125,000以上のアーティストとソングライターを抱える巨大レーベルグループになる。Sunoとの今回の契約がその合併後にどう継続・拡大されるかも注目点だ。

また、Sunoが間もなくリリースする新モデルはWMGとBMGの参加のもとで開発されたと明言されている。そのモデルがどんな出力の質・スタイルを持ち、既存モデルとどう差別化されるかは、AI音楽ユーザーにとって直接的な関心事になる。

作り手・聴き手への示唆

Sunoで音楽を作っている人にとって、業界との合意が増えることは短期的には「安定感」をもたらす可能性がある。ただしその代償として、ダウンロード制限の強化やプラットフォームのポリシー変更が続くことも予測される。

AI音楽を取り巻く業界の動きは今、「訴訟で止める」か「ライセンスで取り込む」かの分岐点にある。BMGの選択はそのどちらかが正解かを示すものではなく、業界全体がまだ模索している現実を映している。


ソース: Music Business Worldwide